第三部第三章 獅子身中の虫その七
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とはまるで違っていた。人口問題はあるが彼等は比較的いい生活をしていたのである。
だが人口の差は如何ともし難い。連合との差と限界に達した領土の開拓、そして余剰人口、こうした相矛盾する問題が
彼等を悩ませていたのである。
「北方や西方に行けたらいいのだがな」
「流石に何十万光年も移動は出来ませんね」
「そうだな。それが出来れば最初から苦労はしない」
マールボロは半ば溜息混じりに言った。
「実はそれで君に中央政府から話が出ているのだ」
「中央政府からですか?」
「そうだ。本土に戻って来て欲しいという話だ」
「本土にですか」
「うむ、そして防衛計画の総責任者になってもらいたらしい」
「そうですか」
「異論はあるかね?今なら断ることができるが」
「いえ」
モンサルヴァートは首を横に振った。
「私はただ自分の与えられた任務を忠実に行なうのみです」
「そうか、では行ってくれるな」
「はい」
こうしてモンサルヴァートは総督府から本土へ戻ることとなった。彼の新しい肩書きはエウロパ中央軍統帥本部長であった。これは軍の作戦等を統括する組織である。
彼の移動に伴ってサハラ総督府のスタッフも大幅に変わった。各艦隊の司令や参謀本部の上層部はのきなみ本土へ移った。これはモンサルヴァートが彼等の意見を求めたからであった。
「統帥本部に来るのも久し振りですね」
ベルガンサは本部長室で部屋の中を見回しながら言った。
「そうだな。私も一度ここで勤めたことはあったが」
彼も以前ここにいたことがある。その時は大佐である部門の責任者であった。
「そしてここに戻って来られたというわけですね。栄達して」
「栄達という言葉は余計だ。私は軍の一つの職務に就いているだけに過ぎない」
彼はそうした言葉が好きではなかった。
「ところで閣下、早速ですが」
「うむ、仕事だな」
「いえ」
ベルガンサは微笑んで首を横に振った。
「私は今は書類を一枚も持っておりませんよ」
「では何だ?てっきりサインするべき書類を持って来たのかと思ったが」
「伝言がありお伝えに来たのです」
「伝言!?」
「そうです、総統からです」
「総統から」
ラフネールである。エウロパの元首である。
「はい、是非閣下にお会いしたいそうです」
「一体何の用だ」
「そこまでは。もしかすると結婚を勧められるとか」
「おい、私は既に婚約しているぞ」
ベルガンサの冗談に口を挟んだ。
「どうされますか?」
「断る道理もないな」
彼は言った。
「では行かれますね」
こうして彼はベルガンサを連れて総統官邸に向かった。
官邸は宮殿であった。ロココ様式をもととした優雅な造りとなっている。オレンジをもととしており内部には様々な装飾品や芸術品が置かれている
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