第三部第三章 獅子身中の虫その六
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ースを以前より考えていた。だからこそ冷静でいられたの
である。
「そうなるも最早サハラに進出どころではない。本土が危ういのだからな」
十字軍の時の欧州に似ている、モンサルヴァートはそれを聞き思った。
十字軍もアラブへ進出している時に東からモンゴルの襲来を受けた。欧州はその騎兵の前に風前の灯火となった。ドイツやポーランド、ハンガリーの騎士団は瞬く間に壊滅し東欧はモンゴルのものとなった。欧州全土がその蹄の下にひれ伏すのは時間の問題かと思われた。
だがここでモンゴルであることが起こった。モンゴルのハーンであり最高司令官でもあるオゴタイ=ハーンが死去したのである。これによりモンゴルは兵を引き上げ二度と欧州を攻めることがなかった。あの時オゴタイが死ななければモンゴルは欧州を席巻していたことは間違いない。そうなれば歴史は大いに変わっていた。
「君はニーベルング要塞群についてどう考えているかね」
マールボロはモンサルヴァートに問うた。
「ニーベルングですか」
古の邪な小人が作り出した呪われし指輪の名を冠した要塞群である。一個の惑星を要塞としその周囲に十六の人口惑星を配置している。その防御は固く難攻不落と呼ばれている。
「確かにニーベルング要塞群の守りは固いです」
モンサルヴァートは率直に己が意見を述べた。
「ですがあまり頼り過ぎるのは問題かと思います」
「どうしてだね?」
「あの要塞群に頼りきるあまり他の防御が弱くなってしまいます。そうなれば若しニーベルング要塞群が陥落した場合エウロパを守るものはなくなります」
「つまり他の防衛力をも整備すべきであると考えているのだな」
「その通りです。何しろ連合と我等の国力差は歴然としています。そうそう簡単に守れるとは思わないほうがよろしいかと」
「そうだな。私もそう考える」
マールボロはそこまで聞いて自分の考えをようやく述べた。
「今のエウロパの備えはあの要塞群しかないのが実状だ。確かにそれだけでは心もとない」
「はい」
「他の整備もしておかなくてはならない。そしてこれは急を要する」
そうであった。連合が若し動けばどうなるか。それはもう明らかであった。
「艦隊も必要だな。その他の港湾施設や基地の整備も」
「やはりそうした整備が不可欠です」
「そうだな、あの圧倒的な国力を考えるとそれでも心もとないが」
やはり人口の差が出ていた。三十倍もの開きは覆しようもないものであった。
しかもエウロパにはこれ以上の余剰人口は養えなかった。その為にサハラに侵攻し植民をしているのだ。東にはその連合が存在する。北方と西方は星系が一つもない。人の居住可能な星系までは数十万光年もあると考えられている。おいそれと行けるものではない。
従って戦力を拡大させるにも限界がある。それをどうすべ
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