第五章
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第五章
女ではあっても
緋赤紅には悩みがあった。それが何かというともうこの世界においてはもう誰もが知っていることであった。
おデコのことである。彼女はその広くて眩しいおデコのことを何よりも気にしているのである。それで今日もこのことをついつい言ってしまった若い侍をだ。こてんぱんにのしてしまったのである。
「誰が禿じゃ、誰が!」
「いえ、私はそこまでは」
「私は禿ではない!」
本人はあくまでこう主張する。叩きのめしたその相手を右足で踏みながらである。
「他の者よりほんの少しばかり額が広くてそのうえ光っているだけなのじゃ」
「そうなのですか」
「それにまだ十九歳じゃ。それでどうして禿るのじゃ」
自分でも気にしていることが実によくわかる言葉である。ついつい言ってしまったのである。
「それに女は禿ぬぞ」
「しかし中にはおなごであっても。そして若くとも」
「ええい、まだ言うか!」
「す、すいません!」
「すいませんで済めば侍はいらぬわ!」
失言してしまった武士をさらに攻撃する。とにかく彼女にとってはおデコのことは絶対に禁句なのであった。しかしそれをついつい言ってしまう者も中にはいるのである。その末路は常に悲惨なものである。
舵天照ワールド 完
2010・6・30
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