第三部第三章 獅子身中の虫その五
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た。だがそれは本心から連合の自主性を尊重した言葉であり彼等は連合のおおらかな気風を愛していた。だがこの連中が愛していたのは海賊から貰える金であり自分達が正義の味方をして世の中に出られるという虚栄心であった。こうした連中が長い間連合の中にいたのである。
その問題は長きにわたって指摘されてきた。だが彼等も狡賢く容易に尻尾は見せなかった。時として海賊が捕まり彼等との関係が暴露されることはあったが全てがそれで終わるわけではなかった。一つ潰せばまた一つ、といった具合にこうした輩は出てきた。そして潰えることがなかった。
「要は宇宙海賊がいなくなればよいのだ」
言うのは容易かった。だが連合において宇宙海賊は宿唖でありそうそうおいそれとは解決できるものではなかった。それでも次第に法整備から進められていきキロモトが大統領になった時にようやく連合軍が設立された。実に一千年の時をかけてである。
「経済や貿易に費やす努力の百分の一でも向けてくれればすぐに設立されたものを」
こう言う者もいた。だがそれもまた連合の事情をよく知らない言葉であった。
連合は各国の自治、発言力が強い。その為その調整に多大な労力を費やす。そして経済や貿易だけではないのだ。教育や保健、通信等やるべきことは多い。何しろ広大で今は二兆の市民がいる。その生活を守る為にはどうしても軍のことは後回しになってきた。治安も宇宙海賊に対してだけではない。それぞれの星の治安も重要であった。もっぱら宇宙海賊は通商船を狙う。星はまた別だ。星の治安も重要であったのだ。
宇宙海賊は確かに厄介だが彼等は個々の力は微々たるものだ。それに出る宙域も限られている。そこをどうにかすればよい、という発想であったのだ。
だがこの考え方では限度があった。先にも述べたが一つ潰せばまた一つである。各国が自分達のテリトリーに海賊が出没したならばこれを叩くということをしてきたのだ。それで通商は一応は守られる。経済もだ。だが根本的な解決ではない。やはり統一され迅速に動ける中央軍の必要が強く錦されるようになってきていたのである。
そして遂に連合軍が設立された。これにより海賊は連合全域において極端にその数を減らした。これには海賊の投降と連合軍への参加を呼び掛けた戦略も大きく効を為した。当然彼等は規律から厳しく叩き込まれたがそれにより彼等は海賊から軍人へと大きく変貌を遂げた。そして海賊に怯える人々は減っていった。
だがこれを快く思わない者達もいた。
「これでは我々の裏の顔がいずれ白昼の下に晒されることになるぞ」
密かにこう考える者達がいた。その海賊達と結託していた市民団体の構成員達である。
彼等は今まで口では連合の自主性だの海賊の人権だのを主張してきた。だが実は海賊と組んで私腹を肥やしていたに過ぎなかったのだ。
無論そ
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