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星河の覇皇
第三部第三章 獅子身中の虫その四
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「八条殿は寒いと感じられますか?」
「?いえ」
 彼はその言葉に少し驚いた。
「胸が寒いとかは」
「そうは思いませんが」
「見たところその服装では胸が少し寒そうです」
 彼はスーツを着ている。だが本当に寒いとは思っていない。
「陛下御言葉ですが」
 彼は帝の真意がわかりかねていた。そして言おうとしたその時である。
「あれを」
 帝は侍従長に対して言われた。
「わかりました」
 侍従長は頷くとその場を退いた。そして黒い箱を恭しく持って姿を現わした。
「あれは・・・・・・」
 漆塗りの箱であった。かなり古風である。
「これは私からの贈り物です」
 帝はそう言うと玉座を立たれた。そして侍従長から箱を受け取られその中身を取り出された。
「陛下、そのようなことは」
 君主は無闇に玉座を立つものではない。如何に若いといえども君主なのである。
 だが帝は八条の制止にも関わらずその箱の中身を持たれ八条の方へ歩み寄られた。その手には金色の勲章があった。皇室の紋章である菊をかたどってありリボンは紫である。
「それは・・・・・・」
 彼もその勲章は知っていた。日本で最も位の高い勲章である大勲位である。
「八条殿、貴方の功績を称えこれをお渡しします」
 帝はそう言って八条の左胸に大勲位の菊を御自身の手で着けられた。
「陛下・・・・・・」
 これには流石の八条も驚きを隠せなかった。この若さで大勲位を授けられたという話は聞いたことがない。ましてや帝御自らの手で。
「連合軍設立と今までの働きはこの連合の平和にどれだけ貢献したかわかりません。その功績を称えこれを授けます」
「しかし私はまだこのようなものを頂く程のことは・・・・・・」
「八条殿」
 ここで帝は言われた。
「これからの功績もあるのです。それを考えるならば当然です」
「そうでしょうか」
「はい。連合軍の設立はそれだけの大きな意義があると聞いています。その存在が連合三兆の市民にとってどれだけ有り難いかということも」
 どうやら総理が陛下に何か言上したな、と察した。
「これからも頑張って下さい、連合の平和の為に」
「わかりました」
 こうした若い女性に頼まれるとやはりいささか弱い。八条は半ば条件反射的に答えた。
 こうして会談は終わった。八条は帰り道に八幡の首相官邸に立ち寄った。
「あら、珍しいわね」
 伊藤は彼の姿を見ると微笑んで答えた。
「何言ってるんですか、私が来るということはわかっているでしょう?」
 八条はすこし苦笑して問うた。
「ふふふ、確かにね」
 伊藤は笑って答えた。
「何故ここへ来たのかはわかっているわ。大勲位のことでしょう?」
「はい。陛下にそのことを言上したのは総理ですね」
「そうよ」
 伊藤は答えた。
「君の今の功
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