第三部第三章 獅子身中の虫その二
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ージは甚大なものとなります」
「やっぱりカッサラを奪われたのと二度の敗戦が響いているわね」
「そうですね。やはりカッサラを奪われたのが全てのはじまりでした」
「そういえばあの戦いでオムダーマン軍は苦戦していたそうね」
「ええ。ですが一隻の巡洋艦の活躍により戦局は逆転したそうです」
「その巡洋艦の艦長は誰かわかるかしら」
「アッディーン中佐です」
「あら、じゃあサラーフはまた彼にやられているのね」
「そういうことになりますね」
「中々凄いわね。それにしてもまだ若いそうだけれどそこまで活躍するなんて」
「連合、いや日本にいないのが残念のようですね」
「わかるかしら」
「そのお顔を見れば」
「ふふふ」
彼女は笑っていた。学者出身であるせいか彼女は部下を育てることを好む癖がある。それは政策にも出ており教育にかける情熱は並々ならぬものがある。
「今の子達も期待しているけれどね。けれど生徒は多い方がいいわ」
「彼等は生徒ですか」
「あら、君だってそうだったじゃない」
「確かにそうですが」
八条は苦笑した。その整った顔は苦笑の表情も美しい。
「ところで日本に一度戻らない?」
「今は駄目ですよ、連合軍を作らなければなりませんから」
「嫌ね、入閣してくれとかそういうのじゃないのよ。実は陛下からお呼びがあって」
「陛下がですか?」
皇室はこの時代においても存続していた。この時代もやはり立憲君主国は存在しておりエウロパにおいても復権したハプスブルク家をはじめとしてイギリスやオランダ、スペイン等があるがこの連合においても存在している。マウリアのように藩王といったものはおらず皆その国の元首となっている。
だが皇室の位置は特殊であった。他の君主達は『王』である。『皇室』と『王室』は似て非なる部分がある。
それは格であった。皇帝は王よりも上位の存在である。中国では王は皇帝が承認するというものであった。皇族、若しくは特別な功績のある者しか王の位は与えられなかった。属国は王であった。これは皇帝の臣下であるということに他ならない。欧州でも同じである。欧州の皇帝はローマ帝国皇帝の後継者という位置付けであるが神聖ローマ帝国皇帝は王の上に君臨していた。フランス皇帝を名乗ったナポレオン=ボナパルトも諸国の王をその足下にひれ伏させた。
だが欧州ではこうも言われる。
『皇帝には誰もがなれるが王には誰もがなれるというわけではない』
この言葉は皇帝というものを考えるうえで重要である。今だにアメリカや中国の大統領を皇帝と陰口を叩く声がある。これは当然皮肉であるがその彼等も王とは呼ばれない。それも当然である。
王はその血筋故に王となる。その血筋の者でなければ王とはなれない。ローマ皇帝は簒奪していようが推挙されようが帝位に就けば皇帝であった
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