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星河の覇皇
第三部第二章 緒戦その三
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「それ以上に戦場ひいる者達のことをお考え下さい。彼等は命をかけて国家の為戦場にいるのです」
「・・・・・・そうだったな」
 他のサラーフの多くの国々と同じくオムダーマンも徴兵制を敷いている。厳密には選抜徴兵制であるがそれでも義務として定められているのは事実である。
「そうした兵士達のこともお考え下さい。我々は彼等の命を預かっているのですから」
「彼等を生きて帰す義務もあるということか」
「そうです。それも指揮官の務めです」
 彼等は一様に言った。アッディーンは決して冷酷な男ではない。感情豊かであるが兵士達にとっては寛容で気前のいいことで知られている。そして体罰を厳しく取り締まり威張った行動を戒めている。よく古参兵などに見られるが部下を虐待する愚か者は何処にでもいある。アッディーンはそうした弱い立場の者をいたぶることを特に嫌った。
「弱い者虐めは自分が弱い者であるということを公言しているのに他ならない」
 彼はそう考えていた。幼年学校においても理不尽な要求をした上級生に反抗している。下級生に対しては面倒見がよく優しい先輩であった。同級生に対しては公正であった。それを兵士に対しても同じ態度で接しているのだ。こうした時に出るのが人柄である。
「個人の好き嫌いは言ってはいられないか」
「そうも言えますね」
 ガルシャースプが答えた。
「勝利を収める為にはあらゆる手段を尽くさなくてはなりません。国家の為、そしてその中にいる国民や兵士の為にも」
「多くの命の為にか」
「はい、我々が預かっているのはそれだけ大切なものなのです」
「・・・・・・・・・」
 アッディーンは沈黙した。今まで彼は戦争に勝てばいいとだけ思っていた。だがそれだけではなかったのである。
 戦争は一人で行なうものではない。多くの者が命をかけて争う。そしてその者達の人生もそこには内包されているのである。それを忘れた時独善となる。
 だがそれを忘れる指揮官もいる。そうした者は将としても人間としても失格だ。彼はそのことを今知った。
「おそらくナベツーラもミツヤーンも他の者の命なぞ塵芥程にも思ってはいないでしょう。ですが閣下は違います。決してあの様な連中のようにはならないで下さい」
「将としてではなく人としてか」
「はい、そんな閣下でなければ我々も今までついてきませんでした」
 彼等は口を揃えて言った。彼等はアッディーンの下にいるのは軍務だからである。だがそれ以上にアッディーンの人柄と将としての才に惹かれているのだ。
「そのおとは忘れないで下さい。閣下の手には多くの者の命がかかっているということを」
「・・・・・・わかった」
 彼は頷いた。それを理解した彼は将としてまた一つ大きくなったのである。
「ところでだ」
 アッディーンはその話が終わると話を元に戻し
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