第三部第二章 緒戦その三
[6/6]
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
「そうしたマスコミは何かしらで潰しておいた方がいいな。サラーフを腐らした後はオムダーマンも腐らせてしまうだろう」
「ですがそれは言論弾圧になりますよ」
「それはそうだが」
オムダーマンは共和制である。そして議会は普通選挙により選ばれる。言論や表現の自由も憲法で保障されているのである。
従って彼等はそうした言論弾圧には敏感である。無論賛成なぞしない。
「よく考えるとオムダーマンではネットも発達している。その心配はないか」
「はい、それに連中の末路は私には容易に想像がつきますし」
「というと!?」
アッディーンは尋ねた。
「それはこの戦いの最後にわかりますよ」
ハルダルトはそう言うと満面に笑みをたたえた。
「そうか」
アッディーンはそれがどういう意味かわからなかった。ただ秘書の話を聞くだけであった。
「我々が何かする必要はないということか」
「はい、連中はアッラーが裁きます」
ハルダルトの言葉は的中する。そしてアッディーンは彼の才に大きなものを見ることになる。
サラーフとオムダーマンの戦いは直接剣を交えるものではなくなっていた。だがそれは今のところではあってそれがすぐに剣を交えたものになるのは誰の目にもあきらかであった。
サハラ各国はそれを注意深く冷静に見守っていた。特に北方にいるあの男は。
「そうか、ナベツーラ派が出て来たか」
彼はその情報を訓練中の艦橋で聞いた。
「はい、今度の選挙の結果次第では政権を握りかねない勢いです」
参謀の一人がそう報告した。
「選挙の結果では、か。では今の政権担当者達は相当焦っているな」
「はい、何とかして得点を稼ごうと躍起になっているようです」
その参謀はそう言った。
「ふむ、では近いうちに会戦があるな」
シャイターンはそれを聞いて言った。
「得点を稼ぐには外敵を叩くのが最も効果的だ。そして丁度その外敵が領内にいる」
「それが一番でしょうね」
「そうだ。だがそれに失敗したら今の政権は確実に崩壊する」
シャイターンの声は冷徹であった。
「そしてナベツーラが政権を掌握する。奴のことだ、軍も自身の息のかかった者達で固めるぞ」
彼はナベツーラのことをよく知っていた。勿論いい話は聞いていない。
「そうなればこの戦いの行方は決まったも同然だ」
「つまり今度の会戦がサラーフの命運を決するのですか」
「そういうことになる」
シャイターンは答えた。
「我々が動くのはそれからでいい。まずは」
シャイターンはここで窓の外を見た。そこには幾千万の銀河の星々が瞬いている。
「ここでの基盤を固めなければな」
訓練から帰ると彼はハルーク家の未亡人との婚約を発表した。これにより彼は北方での揺るぎない地位を手に入れることとなった。
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ