第三部第二章 緒戦その三
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て物事が言える者はそうはいない。
「次の戦いがこの戦いの行方を左右する、それを忘れるな!」
「ハッ!」
参謀達は一斉に敬礼した。そして彼等は解散した。
アッディーンはムスタファ星系の有人惑星の一つに置かれたホテルにいた。この星系は有人惑星が二つあり同じ軌跡を一八〇度離れて動いているのだ。
彼はそのホテルの一室にいた。ロイヤルスイートである。
しかし彼はその部屋をもてあましていた。どうも過ごしにくそうである。
「閣下、何かお困りですか?」
鞭の様にしなやかな身体を持つ白い肌の男が問いかけてきた。黒い髪と鳶色の眼を持つこの青年もまた軍人である。アッディーンの秘書オマーム=ハルダルトである。階級は大尉である。
「そういうわけではないが」
彼はやはりあまり晴れない顔で答えた。
「どうもロイヤルスイートというのは落ち着かないな」
「そうでしょうか。私には心地良い部屋に思えますが」
「それは君の感性だろう。俺はどうもこうした部屋は馴染まないんだ」
「そうなのですか?それは意外ですね」
「もっと普通の部屋はとれなかったのか?こうした豪奢な部屋は俺の性に合わない」
「そうは言いましてもこの作戦の総司令官であすから。それなりの部屋にいてもらわないと」
総司令官以上の部屋には泊まることができない。これは止むを得ないことであった。
「それはそうだが」
アッディーンはまだ不満そうである。そこでチャイムが鳴った。
「誰だ?」
ハルダルトは呼び出し鈴の前に行き部屋の前に立っている兵士達に問うた。ホテルの中とはいえその警備は厳重である。
「ホテルのボーイです。食事を持って来ております」
「そうか。ボディーチェックの後で私が行く」
彼はそう言うとアッディーンの方へ向き直った。
「閣下、食事が届きました。暫くお待ち下さい」
「ああ」
ハルダルトは敬礼し部屋をあとにした。アッディーンは一人になると窓の外に顔を向けた。
「全く、こんな無駄に贅沢なところにいて何になるというのだ」
彼は再び顔を顰めて呟いた。
「俺には似合わん。それよりもごく普通の部屋にいたいものだ」
彼は公務員の両親の下に生まれた。そしてそのままごく普通の家庭で育った。幼年学校に入ってからは隊舎で生活していた。そして今は官舎と艦内の往復である。カッサラにいた時も官舎住まいであった。そしてブーシルでは殆ど艦内で暮らしていた。
従ってこうした豪奢な部屋にいることは慣れていないのだ。それよりも艦内の居住区や官舎の方がずっと落ち着くというのが彼である。
従ってその生活は派手ではない。将官として忙しいこともあるが私服も質素であり趣味も読書やスポーツ、それも一人でもできるランニングや陸上競技といったものばかりである。オムダーマンが誇る若き名将も
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