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星河の覇皇
第二部第五章 次なる戦いへの蠢動その三
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して何か動きはあるか」
「何人か反対している者がおります」
「そうか」
 彼はここで再び邪な笑みをたたえた。
「いつものようにやれ」
「わかりました」
「それからだ」
 彼は切られた梨を手に取りながら言った。
「北方諸国内で私に不満や不信を持つような勢力を調べておけ。すぐにな」
「それはもうとうに完成しております」
「早いな。ではそれを見せてもらおうか」
 彼は梨を食べ終えると私室に向かった。
 歩きながら周りの者が彼の服を着替えさせている。すぐに彼は豪奢な絹の服に着替えていた。
 私室に入った。そこは多くの高価な装飾が為された書で囲まれた本棚であった。これは彼の私室の一つである。
「では見せてもらおうか」
 彼はその中に置かれている黒檀の椅子に座ると執事に声をかけた。
「はい」
 執事は一つのファイルを差し出した。
「ふむ」
 彼はそれを手にとった。そしてその中をパラパラと見た。
「如何いたしますか?」
「そうだな」
 彼は暫し考えたがやがて決断を下した。
「黄金を贈れ。そうでなければ・・・・・・」
 その眼が剣呑に光った。
「毒だ」
「わかりました」
 それもまた何処か儀式めいていた。彼等はこうした陰謀の密議も何処か儀礼のように執り行なっている。
「これでこの地における私の地位は万全のものとなるな。大衆の支持は既に得ている」
「まずはそれが最大の後ろ楯となりますな」
「そうだ、そしてハルーク家。最早この地で私に逆らえる者はいなくなる」
「出て来たらどうしますか?」
「それもいつものことだ」
 彼はファイルを執事に返しながら言った。
「芽は出て来ないうちに摘み取る」
「お流石です」
「内はこれでよいな。ところで外のことだが」
 彼はここで話題を変えた。
「サラーフとオムダーマンの間でまた何かあるようだな」
「はい、どうやらサラーフの力が弱まったのを好機としオムダーマンが侵攻を計画しているようです」
 普通ならばオムダーマンの一部の高官しか知らない話である。議会も極秘にこれを決定している。衰えたりとはいえ西方第一の国を侵略するのである。ことは慎重にいく必要があった。
「成程な。成功すればオムダーマンは西方の覇者となる」
「そしてすぐに東方のハサンと肩を並べる勢力となるでしょう」
「ハサンとか」
 彼はそれを聞いて考える目をした。
「それは何かと面白くなりそうだな」
「如何致しますか?」
 執事は考える目をしている主に対して問うた。
「サラーフとオムダーマンの戦力は現時点においては拮抗しているな」
「はい。サラーフはまだ二度の敗戦から立ち直っておりませぬ」
 どうやらこの執事は政治戦略のことにも長けているようだ。只の執事ではない。
「そこで我々が動けばどうなる
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