第二部第五章 次なる戦いへの蠢動その二
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戦行動は専門的な技能が要求される。従って連合はどの国も志願制を採用していた。そして連合軍もそれを踏襲したのだ。
エウロパも志願制である。彼等はサハラに侵攻しているが断続的な侵攻であり兵力差もサハラ諸国とは開いていた。しかも貴族達は『高貴な者の義務』として軍に入ることが多く特に将校の数には困っていないのである。マウリアは連合と状況が似ていた。彼等も特に軍事的緊張はなかった。
サハラの多くの国が徴兵制なのは当然であった。彼等は四分五裂した状況であり互いに覇を競っていた。そのような状況下では少しでも多くの兵が欲しい。それだけでは足らず南方では傭兵まで存在していた。
「サハラの一部では傭兵もありますね」
「あれは止めた方がいいな」
八条は言った。
「何故ですか?」
「彼等は報酬によって動く。その額も馬鹿にはならないし忠誠心も薄いしな」
「ですね」
「それはサハラの状況を見てもわかるだろう」
傭兵はサハラにおいては嫌われていた。戦いが不利になると逃げ出し勝った場合は報酬と称して掠奪を行なう。民衆にとっては災厄そのものであった。実際にシャイターンの傭兵隊が人気が高いのは掠奪等を一切行なわないからである。
「ああした輩は使わないに限る」
「ですね。やはり市民兵に限ります」
「将兵は質が高いにこしたことはない。この場合はモラルに関してだ」
ここで彼は表情を変えた。
「いいか」
「はい」
秘書官は八条の真剣な顔に自らも神経を研ぎ澄ました。
「我々はまずモラルの高い将兵を育てなければならないのだ。強い兵士よりモラルの高い兵士だ」
「そうした意味での優れた兵士ですね」
「そうだ。我々は少なくとも兵器や数には困ってはいない。精鋭を作る必要はそれといってない」
「全体を平均的に強くすると」
「その通り。あとは後方支持と生存能力を上げる。そうすれば戦いは物量で押し切れる」
芸がないと昔から言われるがこれころ最も重要なのである。物量とそれを支えるロジスティック、それを確立した軍隊が覇権を握ってきた。ローマ帝国然りオスマン=トルコ然り。
大兵は少兵に勝る。三十年戦争の傭兵隊長ヴァレンシュタインも常に敵よりも多くの兵を以ってあたるようにしていた。そして勝利を収めてきた。
「オーソドックスで構わない。オーソドックスにことを進めていけばいかなる場合にも対処がし易い」
「成程」
「将兵達にも伝えてくれ。まずはモラルを守ることから身に着けろ、とな」
「わかりました」
こうして今度は将兵のモラルについて指示が下された。それは徹底されたものであり違反者は些細なことでも厳罰に処された。こうして連合軍の軍規は厳粛なものとなった。
連合軍は次第にその形をなしていった。そして本格的な軍となっていった。
連合軍が産みの苦しみを
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