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星河の覇皇
第二部第五章 次なる戦いへの蠢動その一
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がそれは変わらなかった。
 中でも日本の位置は昔から特殊であった。米中に単独で対抗出来る数少ない国であっただけでなくその人気は昔から高く何かと中南米やアフリカ諸国から頼られていた。実際に中南米諸国の地位向上には日本の存在が大きかった。
「確かに道理ではいい」
 アメリカ代表が言った。
「エウロパに対抗するには連合中央政府の権限強化が何よりも望ましい」
「それは既に連合内の一致した考えですしね」
 ベトナム代表が言葉を入れた。
「しかしだ」
 ここでオーストラリア代表が苦い声を出した。
「急な権限強化はどうかというわけですな」
 中国代表が言葉を入れた。
「急なことはよくありませんから」
「それは貴国の権益を考えての発言ですか」
 タイ代表が一見良識的な発言をした中国代表に対して言った。
「それはどの国も同じだと思うが」
 インドネシア代表がその指摘に対してさらに指摘を入れた。
「我々の今までの主導的な役割や権益が損なわれては何もならない」
 銀の髪のニュージーランド代表の言葉は渋い。
「それを日本、いや伊藤首相と八条長官はわかっているのだろうか」
 日本とて環太平洋諸国である。しかもその地位はかなり高い。だがここでも日本は昔から異質であった。
 地球の近辺にその領土の大部分があるせいであろうか。彼等は常に連合中央政府寄りの行動や発言を繰り返してきた。そして今度もである。
「中央軍はいい。規模は定められながらもそれぞれの国が軍を持つことは了承してくれたしな」
「しかしそれで充分ではないのか。我々の主導体制を崩すことになりはしないだろうか」
 マレーシア代表とフィリピン代表の危惧も同じであった。
「まだそう決めるのは早いと思うが」
 ブルネイ代表が彼等を宥めるように言った。
「そうだな。一度日本の意志を確かめよう。それからでもいいではないか」
 カナダ代表がそう言うと皆それに頷いた。やはり日本の存在は大きかった。彼等の経済や技術も縁の下で日本に支えられている状況であった。
 話を終えると彼等はホテルを後にした。それは伊藤の耳にも入っていた。
「如何いたしますか?」
 外相である東宗久が官邸の執務室において伊藤に対して尋ねた。見れば長身痩躯の美男子である。髪も瞳も黒いが顔立ちはいささか彫が深く肌は白めだ。ルーツの一つにカナダ人があるせいか。
「また相変わらずね」
 伊藤はそれを聞いて微笑んだ。知的な顔が悪戯っぽく笑った。
「我が国には我が国のやり方があるのを本当に理解しないのね、彼等は」
「はあ」
 東は予想した言葉とは違うその言葉にいささか拍子抜けした。
「確かに我が国は連合中央政府に対して親密な態度をとってはいるわ」
 それは事実であった。否定する理由はない。
「けれどね」
 彼女は
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