第二部第四章 二つの戦いその二
[5/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
アガヌはすぐに攻撃を敵左翼に集中させた。それでサラーフの左翼は崩壊した。
同時にアッディーン率いるオムダーマン軍左翼が崩壊したサラーフ軍右翼を追いその脇に攻撃を仕掛けてきた。それはサラーフの左翼も同じ状況であった。
サラーフ軍は両翼から攻撃に曝されていた。統制はさらにとれなくなっていた。
「クッ、兵を少し退かせよ!」
それを見たサラーフ軍の司令は部隊を少し退かせるよう指示した。だがそれは的確には伝わらなかった。
「撤退か!?」
このような混乱した状況ではままあることであった。サラーフ軍の中にはそのまま戦場を離脱する艦もあらわれた。
「待て、逃げるな!」
それを見た司令は慌てて彼等を止めようとする。だがそれは伝わらなかった。
ようやく退き陣を再構築しようとした時には既にその数は大きく減っていた。最早オムダーマン軍の方が優勢であった。
「形勢逆転だな」
アッディーンはその敵軍を見ながら言った。そして三日月型の陣を組み攻撃を仕掛けた。
サラーフ軍も果敢に戦う。だが数を大きく減らしてしまっている為満足に対抗できない。次第に追い詰められていく。
「こうなっては仕方がない、戦いにはならん」
サラーフ軍司令は忌々しげに呟いた。
「全軍撤退だ!すぐにこの星系から退却せよ!」
退却の指示が下った。こうしてサラーフ軍は撤退を開始した。
その退却も困難を伴うものであった。オムダーマン軍の追撃を受けようやくサラーフ領に逃げ込んだ時には半分程にまで減っていた。
「これで外患は始末したな」
アッディーンはそれを見ながら満足した笑みで言った。それから間も無く彼のもとにハルドゥーンが自害したとの報告が入った。
こうしてブーシル星系会戦は終わった。結果はサラーフ軍の大敗であり彼等は参加兵力の半数近くを失い自国領に逃げ込んだ。またハルドゥーンも自害したことによりこの星系での工作も水泡に帰してしまうという致命的な痛手も被った。これへの挽回の為北方諸国への侵攻を実行に移すこととなったのである。
「よくやってくれた」
戦いが終わったあとアッディーンはアガヌに対して言った。
「今回の戦いの勝利は貴官によるところが大きい」
アッディーンは満面に笑みをたたえていた。
「いえ」
だが彼は首を横に振った。
「私の功績ではありません。私はただ指示を出していただけです。それよりも」
彼は言葉を続けた。
「兵士達を称えて下さい、今回の戦いは彼等の奮闘なくしてはありませんでしたから」
これが彼の性格であった。彼は自らの功を誇ったりはしない人物であった。これにより兵士達の間で彼の人気は不動のものとなった。
だがそれを誇るような彼ではない。それが軍内での信望をさらに高めることとなった。
「ふむ」
アッディーン
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ