第二部第四章 二つの戦いその二
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彼は旗艦アリーの艦橋に提督達を集めていた。
「おそらく敵は全戦力を正面にぶつけてくるだろう。かなり苦しい戦いになる」
「ハッ」
「この防衛戦の指揮官だが」
彼はそこで指を鳴らした。
「入れ」
そこで砂色の髪と鳶色の瞳を持つ男が入って来た。
「貴官は・・・・・・」
提督達はその者を見て目を見張った。
「アガヌ提督だ。諸君達も知っていよう」
「はい・・・・・・」
ミドハド軍においてアッディーンの攻撃に一人果敢に守ったあの人物である。確か捕虜になっていた筈だが。
「オムダーマン軍に入ることとなった。階級は少将だ」
「宜しくお願いします」
彼はオムダーマン式の敬礼をした。国家の興亡の激しいサハラではよくあることである。滅亡した国の軍人が征服した国に再登用されたり他国に登用されたりすることは。これはサハラの特色でもあった。
だから提督達もそれについては驚いていなかった。驚いたのはいきなり軍の指揮を任せたことであった。
「アタチュルク提督、ムーア提督、ニアメ提督は彼の指揮下に置く。異存はないな」
「はい・・・・・・」
やはり新参者の下につくというのは不満があった。だがこれも命令である。
「コリームア提督は俺と共に三千隻を率いる。これは何に使うかはわかるな」
「ハッ」
コリームアは敬礼でもって答えた。
「時が来れば動くぞ、その時に備えておけ」
「わかりました」
「諸君、勝利は我等が手にある。アッラーは偉大なり!」
サハラの主な宗教はイスラムであった。他の宗教も存在しているがアラブ系の者が多い為必然的にイスラム教徒が多くなるのである。かって原理主義者等を生み出したが今はかっての寛容さを取り戻している。
アッディーンのその言葉が合図となった。オムダーマン軍は戦闘態勢に入った。
まずは数に優るサラーフ軍が動いた。そのまま押し潰さんとする。
「来たか」
アガヌはその動きを冷静に見ていた。
「まずは動きを止めよう」
彼はそう言うと敵の最も突出している部分を指し示した。
「あのポイントに火力を集中させよ!」
すぐに砲撃が行なわれる。そして敵の進撃が阻まれる。
だがサラーフ軍は再び進撃を開始する。今度は横陣を組んで向かって来た。包囲するつもりである。
「中央に火力を集中させよ!」
再び指示が下る。敵の中央部が撃たれ陣が崩れる。
「ほう」
それを見た提督達が思わず声をあげた。
「用兵が巧みだな。守りが上手いわけだ」
彼等はすぐにアガヌの力量を認めた。
敵は次第に苛立ってきた。そして今度は次々に波状攻撃を繰り出してきた。
「ならば」
彼は前線に守りの固い戦艦を置いた。そして方陣を組みそれを防いだ。
敵が引けば押し、押さば引いた。そしてその攻撃をよく防いでい
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