第二部第三章 魔王その三
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フ軍は参加兵力の殆どを失った。僅か数日で六個艦隊分の戦力がなくなったのである。これはそう簡単に取り戻せるものではなかった。ブーシルの敗戦と合わせてサラーフにとって大きな打撃であった。
「これでサラーフの力は大きく減退した」
帰還したシャイターンを待っていたのは熱烈な賞賛の声であった。だが彼はそれに対しては涼しい顔をしていた。
「当然のことに賞賛の声をあげるのはどうかと思うが」
彼は無表情のままそう言った。
「あれだけの大勝利だったのにですか!?」
これには配下の提督達も驚いた。彼等は車に乗り市民達の歓喜の声を受けている。
「あの状況ではごく普通のことだ」
だがシャイターンの表情は変わらない。
「いや、むしろ失敗したな。一個艦隊分逃がしてしまった」
「しかし僅か数日で敵の殆どを討ち滅ぼしましたし」
「サラーフの損害は今後に大きな影響を与える程ですよ」
「だからそれは当然のことなのだ」
彼はまた言った。
「サラーフ軍は油断していた。そして兵力を分散させていた。そうした状況では勝利を収められるのは当然のことだ」
だがそうした状況に導くのは容易ではない。
「だがこれで大きく変わったな」
彼は一言だけ言った。
「はい、我々は救われました」
提督達は笑顔で言った。
「これも閣下のおかげです」
「そうか」
だが彼は北方諸国のことを言ったのではなかったのだ。
(この地での私の地位は確立されたな)
彼はこれからのことを考えていた。
(ハルーク家との婚姻は容易に進みそうだ)
そしてそれからのことも。
(まずはここからはじまる。そして)
彼はニヤリと笑った。
(このサハラが私のものとなるのだ)
後日彼はハルーク家の未亡人と会うこととなった。そして以後彼女との密接な関係が噂されるようになる。
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