第一部第一章 若き将星その二
[1/3]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
こうして彼は次々に武勲を挙げていった。前の戦いでは敵の防衛線を最初に突破している。これにより中佐になり今に至る。
彼を同僚達は『若き狼』という。精悍で動きが速くしかも優れた能力を持っているからだ。その気性も熱く攻撃的である。そして同時に極めて冷静な思考を出来る人物でもある。
この戦いにおいては中央艦隊にいた。だが戦局の悪化により最前線に送られたのだ。
「友軍の撤退状況はどうなっている」
彼は傍らにいる副長に対して問うた。
彼もまだ若い。といっても二十五である。茶色がかった髪に濃い茶の瞳、浅黒い肌を持つ長身の美青年である。名をイマーム=ガルシャースプという。アッディーンと同時にこの艦に配属された人物である。階級は大尉である。
士官学校卒業後順調に進みこの艦の副長となった。温厚で堅実な人物といわれている。
「ハッ、既に損害の酷い艦は徐々に戦場を離脱しております」
彼はモニターを手で艦橋の上部に映し出された指し示しながら報告した。
「それに対し敵軍は攻勢を強めております。駆逐艦及び高速巡洋艦の部隊がこちらに接近してきています」
「どうやら我が軍の数が減ったのを見て一気に攻めるつもりか」
アッディーンはその駆逐艦及び高速巡洋艦の一群を見ながら言った。
「その様です。それも撤退する艦を集中的に狙うつもりのようです」
「我々は戦艦の主砲に任せてだな。成程、手堅い戦法だ」
彼は不敵に笑いながら言った。
「だがそうそう上手くいくものではない」
彼は口を引き締めてそう言った。
「今から敵駆逐艦及び高速巡洋艦部隊に対し攻撃を開始する。主砲及びミサイルを全弾装填せよ!」
「ハッ!」
砲術長が敬礼した。
「奴等の進行方向に行く。そして一斉攻撃を浴びせよ」
彼は次々に命令を出した。アタチュルクはそれに従い大きく動いた。
戦局は変わった。アタチュルクの攻撃により敵の駆逐艦及び高速巡洋艦はその動きを制止させたのだ。
「今だ!」
これに対してオムダーマン軍は攻撃を仕掛けた。動きが止まったところに攻撃を仕掛けられたサラーフの駆逐艦、高速巡洋艦部隊は次々とビーム砲やミサイルを浴びた。
「敵の動きが止まっているな」
それは前線に来たアジュラーンの旗艦からも確認された。
「ハッ、アッディーン中佐の艦が敵駆逐艦及び高速巡洋艦の部隊を止めたのです」
「一隻でか!?」
彼は驚きの声で問うた。
「はい、敵の進行方向に向かい一斉攻撃を仕掛けたのです」
「そうか、それで動きを止めたのか。やりおるな」
彼はそれを聞いて大きく頷いた。
「だがそれで戦局は変わったな」
見れば敵の駆逐艦及び高速巡洋艦部隊は殆ど壊滅してしまっている。戦艦、ミサイル艦部隊も彼等が前にいる為容易に攻撃出来ない。
その間にオム
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ