第二部第三章 魔王その一
[1/5]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
魔王
モンサルヴァート達が情報を収集しているその男、メフメット=シャイターンは今サハラ北方諸国の一つブワイフ共和国にいた。
「ようこそ、ブワイフに」
黒く装飾されたブワイフの大統領官邸で彼は大統領等政府要人達と会談していた。
「いえ、同じサハラの同胞の危機を見過ごすわけにはいきませんから」
彼はありきたりの社交辞令で礼に応えた。
「それよりもエウロパの動きはどうなっていますか」
低く、それでいて透明感のある声である。男らしいが何処か女性的な響きも含まれている。
「はい、それですが」
大統領は話しはじめた。
彼の話によるとエウロパは外交や謀略により同盟諸国の切り崩しを図っているという。既に一国同盟から切り離されようとしているという。
「動きが速いですね。もう切り離しが成功しようとしているとは」
「はい、残念なことに」
ブワイフの要人達はうなだれて答えた。
「エウロパは昔から外交や謀略には長けておりました。だからこそ我々は彼等の進出を許してしまったのです」
「先のアガデスもそれにより倒されてしまったようですね」
「はい」
アガデス滅亡の件はシャイターンもよく知っていた。
「エウロパは一千年以上前にアラブを侵略した時から謀略を得手としてきました」
これはそのアラブの民を祖先とする彼等サハラの者にとっては忌々しい歴史であった。
「哀しいことに我々は今もそれに悩まされております」
シャイターンの言葉は何処か宗教家めいていた。
(やはり大司教の息子であることはあるな)
要人達の中の一人がそう思った。だがそれを口には出さなかった。
「しかしそうした屈辱の歴史も終わる時が来たのです」
彼は厳かな口調で言った。
「今彼等を打ち破れば我等は再び我等の地に住むことが出来るのです」
あえて誇張して言った。
「その為にはまずこの戦いに勝たなければなりません」
ここで彼はブワイフの要人達の目を見回した。
「その為に何を為すべきか・・・・・・」
言葉を一旦区切った。
「おわかりですね?」
「はい」
彼等はまるで催眠術にかかったような様子で答えた。そしてこの会談によりブワイフは今回の作戦の全権を彼に委託することとした。
「ブワイフはこれでよし」
ブワイフの港に泊めてあるシャイターンの旗艦イズライールの個室に彼はいた。
見ればかなり大型の艦である。外装は漆黒でありながら豪奢であり一見軍艦とは思えない。だがその装備は重厚でありサハラの他の艦よりも遥かに重装備である。
またエンジンがかなり大きい。それから見るにこの艦が攻撃力と機動力に秀でた艦であるということがわかる。
彼の部屋は豪華な装飾で飾られていた。まるでオスマン=トルコのスルタン
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ