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星河の覇皇
第二部第二章 狐の登場その三
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いですが」
 生まれはサハラ南方の宗教家の家である。この時代のサハラの宗教はイスラム教がベースであるが昔と比べると多くの宗派が存在している。エウロパにあるバチカンですらかなり変貌し古代ギリシアや北欧の神々を取り入れていることを考えるとそれも当然であるがその中には聖職者を設けているものもある。かってはシーア派にも存在していたがその宗派はスンニーの流れを汲んでいるようだ。それで聖職者が存在するというのも驚くべき変化であった。
「だが待て。この宗派は確か聖職者の妻帯を許していなかった筈だ。しかも彼の父は大司教だぞ」
「あ・・・・・・」
 一同はモンサルヴァートの言葉にハッとした。
「ということは・・・・・・」
「そうだな。私生児ということになる」
 そこでモンサルヴァートは別の資料を出した。
「成程な」
 それを見てまずモンサルヴァートが頷いた。
「聖職者の腐敗というのは大なり小なり何時でも何処でもあるらしい」
 彼の父は神学校を卒業後司教になったがそれは自らの栄達の為であった。そして彼は権謀術数の限りを尽くして出世し大司教にまでなったのだ。
 その間彼は贅を楽しんだ。美食と荒淫を好み多くの愛人を持った。
 その愛人の一人との間に生まれたのがメフメット=シャイターンであった。彼は形式上は大司教の弟ということになってはいる。
「そうした弟がこの大司教には何人もいるな」
 彼は長男ということもあり軍人になった。だが士官学校に入るのではなく傭兵となった。
「あの若さで傭兵隊長となったのは父の後ろ楯があったからでしょうか」
「そのようだな。裏で多くの金が動いたようだ」
 モンサルヴァートは資料を読みながらプロコフィエフに対して答えた。
「だがそれからは全て自分の力だからな。傭兵の世界はそうだと聞いている」
 その通りであった。正規軍と傭兵は違う。全ては金と隊長の力による。
「見たところその力もあるようだな」
 彼はそれなりに戦いを積んできているが敗北はまだない。それどころかその兵力は次第に増えていっている。
「父親の資金力も関係しているようですけれどね」
「確かにな。後ろ楯に宗教があると何かとやりやすい」
 それは昔から変わらない。
「だがそれを上手く活かすのはやはり実力だ」
 モンサルヴァートは言った。
「兵士は金で集められる。だがそれを繋ぎとめるには能力が必要だ」
「そして彼にはその能力があると」
「そういうことになる」
「事実参加した全ての戦いにおいて武勲を挙げていますね」
 サハラ南方も戦乱に明け暮れている。その中で彼は戦うごとに功績をあげている。
「それに謀略も得意なようだな」
 モンサルヴァートはふと目を停めた。
「他の傭兵隊長の部隊を乗っ取ることが多いが。その際に暗殺や買収を上手く使ってい
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