第二部第二章 狐の登場その三
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しかも彼等は忠誠心が薄く形勢不利となればすぐに逃走するか寝返ったりする。しかし背に腹は替えられず彼等を使うのだ。傭兵はハサンでも見られる。だが僅かである。
「何か歴史的な響きのある呼称ですね」
「そうだな。だが実際にサハラ南方ではいるからな」
「そしてその傭兵隊長が何をしているのでしょうか」
「彼等の存在価値は一つしかないさ。我々に対抗し戦う為だ」
「そしてその数は」
「二百万程だ。そこに正規兵を合わせると五百万程か」
「それならあまり怖れる必要はありませんね、戦力だけを考えると」
「問題はそこではないと」
「はい。そのシャイターンがどういう人物であるかが問題です」
彼は目の光を鋭くさせて言った。
「私は今まで傭兵と戦ったことはありませんし。それにシャイターンという男がどういう人物か全く知りません」
「敵を知り己を知れば、という考えか」
マールボロは孫子の言葉を引用した。この時代にも孫子の書は残っている。
「そういうことです。彼の情報を知りたいのですが」
「それだが少し待ってくれ。外交部も情報部も今データを集めているところだ」
「そうですか」
「一つわかっていることは彼もかなり若いようだ。まだ二十代だという」
「傭兵隊長としてはでしょうか?」
「そうだな。大体四十代か五十代の年期のある働き盛りがなるらしいからな」
「そうですか」
「彼については暫くしたら情報が入るだろう。悪いがそれまで待ってくれ」
「はい。作戦発動は各国を分断させてからと考えていましたし」
モンサルヴァートは言った。
「ならばそれまでは訓練と物資の確保に専念してくれ。頼んだよ」
「ハッ!」
モンサルヴァートは答えた。食事の席なので敬礼はしなかったが強い声であった。
数日後シャイターンのデータがアッディーンに届いた。彼は自分の執務室でプロコフィエフ、ベルガンサ等と共にそれを開いた。
「さてと」
まず顔写真であった。見ればかなりの美男子である。
「顔はいいな」
古風な顔写真であるがそれからでもよくわかる。黒い髪を後ろに撫で付け顔の形は鋭利である。まるで古代ギリシア彫刻の様に彫が深く引き締まっている。黒い眼は細めで多少吊り上がっている。
「だが」
モンサルヴァートはその顔に少し妙な感じを覚えた。何処か陰があり邪な感じがするのだ。
「妙だな。これ程整った顔立ちの男でこうした雰囲気を感じるのは」
「美形悪役というのは漫画でも小説でもよくありますが」
参謀のひとりモナコ中佐が少しおどけた声で言った。
「中佐」
生真面目なプロコフィエフはそれを嗜めようとする。
「いや、いい」
モンサルヴァートはそれを制止する。
「気品があるが何か険があるなと思ってな」
「確かに。見たところ生い立ちもそれ程悪くはな
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