第二部第二章 狐の登場その二
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ハルドゥーンはブーシルの中枢に密かに潜り込んだ。そしてスラム街の木賃宿で密かに情報を収集していた。
「オムダーマン軍の動きはどうだ」
彼は一室でノートパソコンを叩いている男に対して尋ねた。
「流石にこの一帯には目がいっていないようですね」
男はモニターに映し出されたオムダーマン軍の警備状況や巡回の状況を見ながら言った。
「そうか。まさかわしがスラム街にいるとは夢にも思うまい」
彼はそれを聞いて叶笑した。
「そうともばかり言い切れませんよ」
後ろから声がした。サラーフから送られて来た特殊部隊の者である。
「ここにも鼠が数匹紛れ込んでおりました」
「本当か」
「はい、やり過ごしましたが」
「そうか、ではここも去った方がいいな」
ハルドゥーンはそれを聞いて考え込んだ。
「おい」
そしてノートパソコンを叩く男に声をかけた。
「同志達に伝えろ。場所を変えると」
「わかりました」
男はキーボードを叩きながら答えた。
「何処にですか?」
「そうだな」
ハルドゥーンはまだ暫く考え込んでいたがやがて顔を上げた。
「一先下水道に隠れよう」
「了解」
下水道は昔からテロ組織や抵抗組織の有効な隠れ家であった。彼等はそこを拠点とし、複雑な迷宮を伝い奇襲を仕掛けてきた。
それは今でも変わらない。連合にもエウロパにもテロリストは存在しこのサハラではそうした組織がモザイク状に入り組み存在しているが彼等は都市部においてはそうした下水道を使うことが多い。毒ガス等でいぶり出そうにもその前にそれを察して逃げてしまうことが多い為に効果はなかった。
ハルドゥーン達は地下に潜伏した。以後彼等は一時的に活動を停止した。
「そして今もこのブーシルにいるということか」
アッディーンは司令室で不機嫌な表情をして言った。
「我々が痺れを切らすのを待っているのでしょうか」
ガルシャースプが首を傾げていた。
「だろうな。今サラーフの艦隊がこちらに向かってきているそうだ」
「国境には既に一個艦隊が配属されております」
「その艦隊と合流して侵攻してくるつもりだろうな」
「同時にハルドゥーン達も蜂起、ですか」
「そうだ。そしてこのブーシルからミドハドの復活が幕を開けるというわけだ。歴史的な名場面になるぞ」
アッディーンの言葉はシニカルなものであった。
「俺達は忌むべき侵略者だ。それを追い出したハルドゥーンは堂々と凱旋する」
「救国の英雄として」
「そうだ、そしてその後サラーフとミドハドは盟友となりオムダーマンを征伐する。大方そんなところだろう」
「そしてその後はお決まりの内部分裂ですね」
「それを見る頃にはオムダーマンは少なくともこの旧ミドハド領から一兵残らず追い出されている」
アッディーンは言った。
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