第二部第二章 狐の登場その二
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「今はハルドゥーンを先に始末するべきなのだがな」
「ですがその所在が掴めません」
「上手く隠れている。下手に強引な捜査や攻撃を仕掛けて民間人を巻き添えにしたら向こうの思う壺だしな」
「はい」
それはゲリラやテロリストの狙いの一つである。ナポレオンのスペイン侵攻においては農村を歩いていたら急に後ろから銃で撃たれる。そうしたことが続き疑心暗鬼になり一般市民をゲリラとみなし殺す。そうなると彼等はフランス軍を憎む。そしてゲリラに協力したり参加するようになる。最終的には彼等はフランスをスペインから追い出した。
だがそれはナポレオンのロシア遠征の失敗とライプヒチの敗戦による失脚が要因であった。スペインでの泥沼の事態は確かにゲリラは彼を苦しめたが倒したわけではなかった。ゲリラによりスペインは大きな犠牲を払った。今エウロパの中央美術館に残されている当時のスペインの画家ゴアの絵にもそれは描かれている。
「ゲリラやパルチザンは同時に高度な外交や政治的センスを必要とする。チトーもそうだったな」
「ええ」
チトーとは第二次世界大戦の時バルカン半島に侵攻したドイツ軍に対抗して戦った指導者である。彼はドイツへの抵抗組織を率いゲリラ戦術で彼等を苦しめた。彼は優れた戦術指揮能力を持っていたが同時に卓越した政治センスを併せ持っていた。
連合国に侵略者ドイツと果敢に戦う自分達の存在をアピールしたのだ。それによりドイツ敗戦後は独立を勝ち取った。ソ連の介入に対しても強気でられたのはそれがあったからだ。そしてソ連に対しても臆することがなかった。離れていたことと大戦によるソ連の疲弊、そして自らの強さを陰に陽に主張したからだ。このチトーによりバルカン半島はユーゴスラビアという連邦国家として存在することができた。
「ハルドゥーンはそれも見越している」
「悔しいですがそうですね」
アッディーンもガルシャースプもハルドゥーンの政治能力はよく知っていた。だからこそこのゲリラ活動に危機感を募らせていたのだ。
「もう暫くしたら各地でテロ活動が起こるぞ」
「ですね。将兵には警戒するよう通達しておきます」
彼等の危惧は不幸にして的中した。数日後ブーシル各地で次々に突発的な爆発事故や将兵への襲撃が起こったのだ。
「早速きたな」
アッディーンはその報告を聞いて顔を顰めた。死傷者も出ていた。
「現場の指揮官達から徹底した掃討を許可するよう要請が出ていますが」
「駄目だ」
アッディーンはそれに対して首を横に振った。
「下手に民間人を巻き添えにすると事態はより悪化する。今は守りを固め自重しろと伝えよ」
「わかりました」
そして数日が経った。被害は増える一方であった。
「現場の不満は頂点に達しております」
「そうか」
彼はシンダントからの報告を受けていた。
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