第二部第二章 狐の登場その一
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狐の登場
アッディーンの艦隊がブーシルに駐留しハルドゥーンを血眼になって捜している頃カッサラに一人の若い男がいた。
彼は港を降り立ちそのままミドハドに向かう船に向かおうとしていた。白い肌に黄色っぽい髪と黒い眼をしている。背は普通位でかなり痩せた身体をしている。顔は鋭利で引き締まり眼からは鋭い光を発している。
「ここからブーシルだとかなりの長旅になるね」
彼は高めの鋭い声で隣にいる若い男に対して言った。
「そういうわけでもないですよ」
その男は答えた。
「ブーシルは確かに辺境にありますがそこまでの道は開けていますから。案外速く到着することができます」
「そうだったのか。私は船旅を楽しめると思ったのだが」
「中佐、不謹慎ですぞ」
彼はそれを聞いて顔を顰めた。
「そう怒るな、ウルドゥーン君」
その黄色い髪の男はその男を宥めた。
「私もブーシルへ行く為に色々と準備をしておいたから」
「そうなのですか?私には遊んでばかりいたような気がしますが」
「それは君が私の一面しか見ていないということの証左だ」
彼はウルドゥーンに対して言った。
「一面でそう見られるというのは人間として問題だと思いますが」
「人を一面だけで判断してはいけないよ」
「悪い一面だけで全てをぶち壊してしまう人もいますね」
「・・・・・・君も口が減らないな、相変わらず」
「中佐と一緒になってからです」
ウルドゥーンは顔を顰めてそう言った。
「まだ士官学校を出たばかりだというのに世間ずれし過ぎている。それではいけないな」
「中佐と一緒になってからこうなったんですよ」
「何でも私のせいにするのはどうかと思うが」
「では何と言えばよろしいのですか?」
「やれやれ」
彼はお手上げといった仕草をした後で彼に対して言った。
「例えば君の士官学校の時の先輩に悪いことを教えられたとか」
「私の期の上の方々は皆立派な方ばかりでしたよ」
「そうだったな。士官学校も落ちたものだ」
「中佐を反面教師としてらしたみたいですよ」
「それは心外だな、私みたいな真面目な人間を」
「何処が真面目なんですか。昨日の夜何処に行っておられました?」
「社会の勉強にね。軍人だからといって世の中を知らなくていいというものじゃないだろう」
「そう言っていつも夜の街に消えるんですから。ちょっとは慎んだらどうですか」
「大丈夫だよ、私をに害を為そうという愚かな奴はいないさ」
彼はそう言うと不敵に笑った。
「油断大敵という言葉をご存知ですか?」
「いいや。実力がものをいうとは聞いているけれど」
「どうやら中佐は一度痛い目に遭われないとおわかりになられないようですね」
「私は
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