第二部第二章 狐の登場その一
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そういった趣味はないのだけれど」
「冗談もいい加減にして下さい、さあ行きますよ」
「うん、ブーシルには可愛い女の子はいるかな」
「それしか考えられないんですか!?」
二人は慌しく港に向かった。暫くしてブーシルに向かう便が宇宙に旅立った。
サラーフ王国はサハラ西方で長い間最大の勢力を誇っていた。サハラ全体においてもその勢力は二番目にある。東方に勢力を張るハサン王国に次ぐ勢力で今まで西方の中心勢力として動いていた。
その兵力も今までは他の西方諸国を大きく引き離していた。だが今は事情が異なる。急激に勢力を拡張してきているオムダーマンに並ばれようとしているのだ。
首都アルフフーフ。ここには王宮の他政府の中枢が置かれている。この国は立憲君主制である。表向きは王の権限が強く王が首相を選ぶ制度になっている。といってもそれは形式的なものであり実際には議会が選んだ首相を王が追認している。
その首相官邸に二人の男がいた。
「ブーシルに潜り込ませている者達からの報告はあったか」
額の広い太った男が会議室で向かいにいる男に対し尋ねた。
「はい、今のところは順調のようです」
サラーフの黄土色の軍服に身を包んだ男が答えた。
「今のところは、か」
「はい。問題は多々ありますから」
軍服の男は言った。見れば髪も髭も銀である。彼は『サラーフの銀狐』と呼ばれる軍務大臣オストゥール=ハルージャである。もう一人の太った男は首相のムスタフード=サレム、サラーフ与党の領袖でもある。
「まずハルドゥーンの手中にある者達の規模がどれだけのものかいまだに把握できていないのです」
「多く見せている可能性もあるということか」
「はい。彼はそうしたことが得意ですから」
「そうだな。実際には全然いないということも有り得る」
「それは充分考えられることです」
彼は目を鋭くして言った。
「あの男は信用なりません故」
「それは私もわかっている」
サレムはそのたるんだ頬を歪めた。太ってはいあるが顔立ちはわりかし整っている。
「今まで我が国をどれだけペテンにかけてきたか。あの男は狡賢い」
「ですね。絶対に信用はできません」
ハルージャもそれに同意した。サラーフはミドハドの外交に何度も煮え湯を飲まされているのだ。
「だからといって利用しないわけにはいかない。今はオムダーマンの方が脅威だ」
「はい、今や彼等は我々に匹敵する勢力を持つようになりました」
彼は言った。
「人口及び兵力においてもほぼ互角です、まさかこんな短期間にここまで勢力を伸ばすとは」
「全てはカッサラからだったな。あの男が表舞台に現われてから」
「アッディーン提督ですね」
彼の存在はサラーフにとっては今や目の上のタンコブであった。
「しかもそのブーシルにいるのはあの
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