第二部第一章 策略その二
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その後は全て君に任せる。頼むぞ」
「わかりました」
こうしてエウロパは再び動きはじめた。やがて南部に企業家やビジネスマン、船員達に混じって多くの工作員達が紛れ込んだ。彼等は闇に潜み暗躍を開始した。
サハラの情報は連合にも伝わっていた。彼等はそれを新聞やネット、テレビニュースで知った。
「このアッディーンという人物は凄いようだな」
時には冗談半分で、時には真面目に彼のことが語られるようになっていた。中には彼に断りなく刊行された研究本まであった。プライバシーというものを無視していい遠い国の人物の話なのでかなり好きなことを書いている。その内容はネットの書き込みと大差ないものであったが売れた。中々のベストセラーとなった。
「実際にはこの人はどういう人物なのですか?」
八条も彼のことには関心があった。何しろ立て続けに武勲を挙げオムダーマンの力を増大させた人物である。興味がないと言う方が不思議である。
「私もよくは知らないのですが」
八条の執務室にもう一人いた。黒と金の連合の軍服に身を包んだこの人物は壮年で口髭を生やしている。肌は浅黒いが黒人程ではない。サハラの者に似ている。
彼はブワイフ=サルムーンという。トルコ出身の軍人であり階級は大将である。今は統合作戦本部にいる。
「幼年学校からすぐに軍に入りそのまま軍歴を重ねていたそうです。話によるとまだ二十を越えて数年程だとか」
「それで大将となったのですか。信じられませんね」
連合においては階級の昇進はそれ程早くはない。戦争もないので当然であるがそんな彼等から見てサハラ各国やエウロパの軍人達の昇進の早さは信じられなかった。
「それだけ優秀であると見ていいのではないでしょうか。オムダーマンはご承知のとおり共和制でエウロパのように貴族制をとってはいません。それに戦う度に劇的な勝利を収めているのですから」
「カッサラでもカジュールでもミドハドでもですね。こうして見ると実に鮮やかですね」
八条は手元にある資料を見ながら言った。
「はい。そのうえで補給や情報収集も忘れてはいません。そうしたバランス感覚も備えているようです」
「天才、ですかね」
「それはどうでしょう」
サルムーンはそれに対しては異議を唱えた。
「まだわかりませんよ。彼は今のところ一提督に過ぎませんし。これからどうなるかわかりません」
一瞬の煌きだけで終わることもよくある話である。そして以後は精彩を欠くということも。
「それはそうですが」
八条は感じていた。この人物はより大きくなると。そしてこれ以上のことをすると。
「まあ今は遠いサハラの西の話ですね」
サルムーンは言った。
「我々の影響になることは殆どありません。あちらの国々には中央政府の領事館さえ置いていませんし」
連合はサハラの国
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