第一部第七章 壁と鉄槌その三
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「心配は無用だ。恒星を背にしていては彼等も奇襲は仕掛けられない。そして兵力においても優勢にあるしな」
「はい」
だがアガヌは思った。それでもサルチェスでは負けたのだと。
アガヌは司令の下を退いた。そして自分の艦へと戻った。
「危ないな、司令は油断されている」
彼は艦長室に戻ると一人呟いた。
「アッディーン中将は必ず仕掛けて来る。おそらく我々の思いもよらぬところから」
彼は壁に掛けられている立体地図を見た。それはこの星系のものである。
「そうやって今まで勝ってきたのだ。今度も必ずやって来るだろう」
その目は強いが悲観した光を放っていた。
「だが問題は何処からか、だ」
彼は恒星を見ながら言った。
「それがわからない限りはこちらとしても手の打ちようがないな」
彼はその地図の上に駒を置いた。それは自軍の艦隊のものであった。
それから二日経った。オムダーマンの艦隊の情報は一向に入って来ない。
「まずいな」
アガヌは艦橋で一人呟いた。
「一体何処から来るかわからんぞ、これは」
ミドハド軍は今前方を重点的に警戒して布陣している。左右及び上下には惑星がある為でもある。そちらの索敵を惑星の偵察基地に任せているせいでもある。
「確かに監視網に懸かった時点で対応しても間に合うが」
彼は心の中に不吉なものが生じるのを感じていた。
「もし彼等がこの索敵網を既に潜り抜けていたならば」
その時は恐ろしいことになると思った。
それから数時間経った。やはり情報は何も入ってはこない。
「来ませんね」
航海長が彼に対し言った。
「今のところはな」
だが彼はそれに対しても厳しい表情のままである。
「だが必ず来る。それも思わぬところから」
彼の言葉は当たっていた。アッディーンの艦隊はこの時彼等の右斜め下にいたのである。
「もうすぐ主砲の射程内に入ります」
ガルシャースプがモニターを見ながら言った。
「よし、ここまでは上手くいったな」
アッディーンはモニターに映る敵艦隊から目を離さない。
「他の艦艇はついてきているな」
「御心配なく。一隻の落伍者もありません」
「ならいい。では全艦に伝えよ、隠蔽をすぐに止めよ、通信も復活しろとな」
「ハッ」
その指令は忽ち全艦に伝わった。全艦それに従い姿を現わす。
「よし、全艦一斉射撃。そしてそのまま一気に突き崩すぞ!」
「了解!」
彼等はそれに従った。そして全艦の主砲からビームが一斉に放たれた。
「敵艦隊発見!」
その艦影はミドハド軍にも発見された。
「何処だ!?」
司令はそれを聞いて身を乗り出した。
「右斜め下からです、近いです!」
「何っ、まさか我が軍の索敵をかい潜ってきたというのか!」
「その様です、今膨大なエネルギ
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