第一部第七章 壁と鉄槌その三
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ったか」
アガヌはその数を減らしていく友軍を見ながら苦悶の声を漏らした。
「だがそうそう好きにはさせん。行くぞっ!」
そう言うと自分の艦を敵の最前線に持っていかせた。
「まだ負けるわけにはいかん。主砲、一斉射撃!」
それがオムダーマン軍の戦艦の一隻を撃沈した。
「ムッ、敵の反撃か?」
それはアッディーンの旗艦からも確認できた。
「いえ、一隻だけです。どうやら組織立った反撃ではないかと」
ガルシャースプがモニターを見ながら言った。
「だとしても骨のある奴だな。一隻だけで向かって来るとは」
「しかし一隻だけではどうにもなりませんよ」
「そうとは限らんぞ。カッサラでの俺のことを思い出せ」
「・・・・・・そうでしたね」
彼は一隻で攻撃を仕掛けようとする敵の部隊の前に急行し一斉射撃でその動きを封じることにより戦局を変えている。戦局とはふとしたはずみで変わることもあるのだ。
「あの艦に攻撃を集中させろ、戦艦を数隻向かわせろ!」
その言葉に従い数隻の戦艦が向かう。だがアガヌはそれに対しても善戦した。
「中々しぶといな」
アッディーンはそれを見て思わず感嘆の言葉を漏らした。それ程までに見事な動きであった。
しかし戦局はオムダーマン軍のものとなっていた。ミドハド軍は各所で寸断され各個撃破されていた。
「司令、これは最早挽回出来るものではないかと」
旗艦の艦橋において副官が司令に進言した。
「・・・・・・そうだな」
彼は腕を組み苦汁を舐めた顔で言った。
「全艦撤退だ。ジャースクまで撤退せろ」
「ハッ」
「そしてあの地で主力と合流することにしよう」
「わかりました」
こうしてミドハド軍は撤退に移った。各艦反転し戦場を離脱していく。
「追え、逃がすなっ!」
アッディーンの指示が下る。オムダーマン軍は追いすがり攻撃を仕掛ける。その前にアガヌの艦が立ちはだかる。
「そうはさせんっ!」
そして友軍を一隻でも多く逃がさんと決死の援護攻撃を仕掛ける。そしてオムダーマン軍を寄せ付けない。
「またあの男か」
アッディーンは彼の艦を見て再び感嘆の言葉を漏らした。
「敵ながら見事ですね」
ガルシャースプもそれは同じだった。
「うむ。だがこれを放っておくわけにもいくまい」
彼は右腕をゆっくりと挙げた。
「今度こそ確実に仕留めろ!」
各艦の主砲が一斉に放たれた。その中の一つがアガヌの艦のエンジンの一部を撃った。これが決まりだった。
「行動不能です」
機関長が報告した。アガヌはそれを聞いて黙って頷いた。
「ならばもういい。降伏しよう」
「はい」
こうしてアガヌはオムダーマン軍に投降した。そしてこの星系にいるミドハド軍は彼の奮戦もありかろうじて戦線を離脱することが出来た。彼等はジ
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