第八十四話 修羅の掟
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んだ」
「そうだ。血はつながっていない」
このことを言う。
「血はな。しかしだ」
「しかし?」
「絆はあった」
このことははっきりと言うのだった。
「だから俺はあいつを殺さなかった」
「弟さんを」
「そうだ。しかしそれは修羅の掟に反していた」
このことをまた皆に語る。
「あいつはそれを憎んでいるのだ。情をかけられたと思ってな」
「また随分と複雑な問題だな」
「ええ、そうね」
シローとアイナがここまで聞いて述べる。
「俺達の世界でもそういうことはあるからな」
「それが戦いに生きる修羅の世界なら」
「そうだ。修羅の世界では戦いが全て」
彼はこのことも語った。
「戦いの中で死ぬのは当然のことなのだ」
「それでも怨みに持たれるなんて」
「後味が悪いわね」
「だが修羅の世界ではそうだ」
フォルカはこのことは肯定する。
「それが普通だ。殺すか殺されるか」
「殺伐としてるね、またそれは」
万丈はそれを聞いて述べた。
「まあ世界が違えばそれがルールになるんだろうね」
「しかし俺は疑問に思った」
話は先に話した通りだった。
「そして俺はここに入った。修羅の世界の生き方に疑問を持ってな」
「あんただけかな、それは」
凱はそれを聞いて述べた。
「それは。あんただけか?」
「どういう意味だ、それは」
「だからだ。あんたは修羅の世界に疑問を持ってたんだな」
「そうだ」
「あんたの他にもまだいるかもな」
こう言う凱だった。
「あんたの他にもな。いるかも知れないな」
「俺の他にもか」
「ひょっとしたらだけれどな。それに」
「それに?」
「義理のお兄さんと弟さんだけれど」
今度は命がフォルカに問う。
「どう思っておられるんですか?」
「どうか」
「はい。怨んでは」
「いない」
はっきりと答えた。
「絆は忘れたことはない。一瞬たりとな」
「そうですか。じゃあ」
「倒したくはない」
フォルカの偽らざる言葉だった。
「何があっても。殺したくはない」
「そうですか。やっぱり」
「できればだが」
「いや、その心が強ければ適う」
凱は力強い声で言い切った。
「その想いが強ければな。絶対にな」
「そうなのか」
「少なくともだ。あんたのその心は届いているぜ」
「俺の心はか」
「誰かにな。その誰かまではわからないがな」
しかしそれでも凱は言うのだった。
「だからだ。行こうぜ」
「戦いにだな」
「そこに答えはある」
凱は言い切った。
「そこにな。戦いに」
「その通りだ」
大河は凱の言葉に大きく頷いた。
「凱隊長の言う通りだ。答えはそこにあるのだ」
「その通りだ。じゃあ行くぜ」
火麻も言う。
「戦いにな」
「よし!全軍に告ぐ!」
大河がここで大きく宣言する。
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