第一部第七章 壁と鉄槌その一
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壁と鉄槌
「オムダーマンとミドハドの戦局はどうなっているか?」
モンサルヴァートは近頃そのことばかり考えていた。
「ハッ、サルチェス星系がオムダーマンの手に落ちました」
ベルガンサが答えた。
「そうか。速いな」
彼はそれを聞いて顎に左の指を当てて言った。
「あの方面は確かアッディーン中将が受け持っていたな」
「はい」
「あの男、戦えば必ず勝っている」
「今のところは」
ベルガンサは少しシニカルな声で言った。
「勝敗は戦争の常です。何時までも勝ち続けることは出来ません。何時かは負けるものなのです」
「そうだな。カール流星王もそうだったしナポレオンもそうだった」
「彼等は戦争に頼り過ぎましたから」
「戦争は政治の一手段に過ぎない、ということか」
「そうです、本来は物事の解決を図るにあたり戦争はその一つに過ぎません」
「それに頼り過ぎるのは危険ということか」
モンサルヴァートは考える目をして言った。ベルガンサの言葉は十九世紀より欧州において常に言われていたことである。
「そうです。我々にしろ武力のみでこのサハラ北方を手に入れていっているわけではないですし」
実際に彼等は武力でこのサハラに入り込んでいる。だがそれよりも政治外交に長けた彼等は巧みな外交政策によりこの地を侵食していっているのだ。武力侵攻をする方が少ない。
「あの連合を御覧になって下さい。彼等は内部であれだけいがみ合っていても武力衝突だけはしておりません」
「そうなったら交易も金融も何もかも破綻しかねないしな」
彼等にとってそれは甚大な損害である。それよりも政治的、経済的に圧力をかけたりする方が遥かに効果的なのだ。これはアメリカや中国の常套手段であった。自分達の言う事を聞こうとしない小国にはこうして圧力をかける。だがそれに唯々諾々と従う国も当然ながら極めて少なく彼等は別の大国をバックにしたり小国同士で同盟を組みそれに対処する。彼等の行動は二十世紀後半の環太平洋地域におけるそれと殆ど変わってはいない。
「まあ彼等は内に宇宙海賊等を持っていて実戦経験は豊富なようですが」
「だが国同士の戦争は絶えてない、と」
「そうです。我々とも武力衝突には結局至っておりませんし」
彼等にとってそれは幸運であったと言ってもよかった。
「今のところはな。彼等はまとまった軍すら持っていなかったし」
「ですが連合軍ができました」
「それだ。どうやらそのおかげで宇宙海賊は益々掃討されていっているらしいな」
「中には投降する者も出ている位らしいですね」
「そして戦力はさらに拡充されるということだ。ただでさえあれだけの戦力を持っているというのにな」
「彼等の動きが気になりますか」
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