第一部第七章 壁と鉄槌その一
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その眠っている資源はかなりのものだと言われている。エウロパの侵攻もそれを狙って、という一面もある。
「ですがそれも全て暫く後の話です」
ベルガンサは再びそう言った。
「今は彼等の行動をシュミレーションし、その対策を考えているだけでよろしいでしょう」
「今のところはそれでいいか」
「はい」
「では上層部にはそう進言しておこう」
「お願いします」
「この件はこれでいいな。ところでサハラに話を戻そう」
彼は話題を変えた。
「オムダーマンとミドハドの戦いだがな」
モンサルヴァートの顔がさらに引き締まった。
「率直に聞きたい」
「はい」
「あの戦いはどうなると思う?」
「そうですな」
ベルガンサは暫く考えた後口を開いた。
「兵力においては確かにミドハドが有利です。しかし」
「しかし?」
「勝敗はそれだけで決まるものではありません」
「そうだな」
彼はその言葉に頷いた。
「オムダーマン軍は補給路も確保しております。アッディーン中将の艦隊にしてもサルチェスの補給基地を押さえております」
「あれは大きいだろうな」
「はい、彼の行動は迅速ですがその実補給を常に心がけております」
「そういえばカジュール侵攻においても補給路の確保は怠っていなかったな」
「そうです。あの作戦はそれを見抜けなかったかジュールが迂闊でしたが」
あの戦いにおいてアッディーンは確かに疾風の様な動きを見せた。だがそれは補給あってのものだったのだ。彼はカッサラを起点としてカジュールの補給基地を陥落させていき二つの要塞を抜いたのである。
「そして今度はサルチェスを足掛かりにして攻めるというわけか」
「そのようですね。おそらく彼が次に向かうのは」
「ケルマーン星系だろうな」
モンサルヴァートはベルガンサが言う前に言葉を発した。彼もサハラのおおよその地理は掴んでいる。
「おそらくは」
「そして後方から回り込み友軍を援護する。そう考えているだろうな、彼は」
「そうでしょうね。ですがそうそう上手くいくとは限りません」
「ミドハドにも意地があるだろうしな」
「そうです。しかしこの戦いで勝利を収めたならば」
「彼の戦功にまた一つ輝かしいものが加わるということだ」
モンサルヴァートは言った。そして二人はその場を後にした。彼等も暇ではない。作戦行動がなくとも山の様な書類が彼等の決裁を待っているのだ。
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