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アーチャー”が”憑依
二十三話
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発した声に聞き入った。おぼろげだった記憶が、鮮明に蘇るようだった。やはり、姿だけではない。

「故あって、立ち会ってもらいます」

 腰に刺した西洋剣を抜き放ち、正眼に構える。真っすぐに此方を見据える彼女から漂う気配は、その小柄な体躯とは裏腹に苛烈。それだけで、彼女がかなりの実力を持っていることが伺える。

「分かった」

 己の影に手を突っ込み、父から託された杖を取り出す。そして同時に戦いの歌を発動。杖は背に吸着させ、構えをとる。これで準備は整った。後は戦うのみ。

「光栄に思え。私が開始の合図を出してやろう」

 二人の丁度中間に躍り出たエヴァンジェリンは高々と腕を上げる。そして、一拍置いたのち……

「始め!」

 掛け声とともに勢い良く振り下ろした。



 先手を打ったのはアルトリアだ。彼女は身に纏う魔力をジェット噴射の様にして加速し、ネギを一足飛びで間合いに捕える。瞬動とは違った高速移動にネギは一瞬瞠目するが、すぐさま気を取り戻し手に魔力を集中させ迎撃態勢に入る。
 斬り下ろし、斬り上げ、薙ぎ払い。次々と繰り出される剣撃を、ネギは余裕を持ってさばき続ける。だが、余裕があるにも関わらずネギは一行に攻勢に出ようとはしなかった。

(懐かしい、か)

 それもそのはず。ネギはアルトリアの剣技に見入っていたのだ。摩耗した記憶の中でも一際輝く彼女の姿。その中には当然、彼女の戦う姿も残っている。アルトリアの剣は、その記憶と寸分たがわぬものだった。
 かつて憧れた彼女の剣。それが今、目の前にある。歓喜せずにいられようか。懐かしまずにいられようか。いっそこのまま、体力尽き果てるまでぶつかりあっていれば……そんな欲求がネギの中にわいてくる。

(……ん?)

 清廉だった技に、僅かな歪みが混じり始めたことにネギは気付く。アルトリアの顔を見てみれば、そこに焦燥が感じられる。ようは、焦っているのだ。己が技が一切通用していないことに。

「……やってみるか」

 今の自分は教師。その事を思い出したネギは一つ思い浮かんだことがあった。それを実行するために、ネギはアルトリアの一撃を強く弾き飛ばし、一端間を開けた。そして……

――――投影、開始!

 窮地に陥らぬ限りは使わぬと決めていた魔術をあえて行使する。作り出した武器は、アルトリアが持つ西洋剣と寸分たがわぬ模造品。

「……同じ土俵に立つということですか」

 アルトリアの口調には若干の苛立ちが籠もっている。それもそうだろう。自分の得意とする土俵に、敵が自ら上がってきたのだ。侮られたと感じるのも無理は無い。

「何、そう怒るな。そもそも私は拳より剣の方が得意だ。それより、だ。アルトリア。今から、お前の目指すべき頂きの片鱗を見せてやる
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