第百十二話 東西から見た信長その四
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その九州方面について元就は言うのだ。
「下がるべきかのう」
「九州はですか」
「下がりますか」
「大友は本州の水際で止められる」
周防と長門の海でだというのだ。
「水軍はこちらの方が遥かに上じゃしな」
「ではここはですか」
「九州から下がり」
「山陰に山陽じゃ」
そこを攻めるというのだ。
「山名なり宇喜多なりをですか」
「取り込んでいきますか」
「宇喜多は取り入って来るじゃろうがな」
元就はまず宇喜多から話す。
「山名、それに尼子は何とか倒したが」
「はい、山中鹿之介もいますし」
「厄介な種は残っていますな」
「まだ何かと」
「悩みの種は尽きん」
元就はここでは苦笑いで言った。
「山中も気になるがな」
「山名はどうされますか」
この家については隆景が問う。
「あの家につきましては」
「さしたる相手でもないしのう」
「では」
「うむ、降伏を促しそれに従わぬならじゃ」
その時はだというのだ。
「攻め取る。その場合は仕掛ける」
調略をだというのだ。毛利家においてはそれも常だ。
「そうするぞ」
「そして山名家を内部から切り崩し」
「いつもの様に攻め落としますか」
「うむ、そうする」
これが毛利家の戦の常だ、まずは切り崩してからなのだ。
「山名は大したことはない、それに山中もじゃ」
「武勇はあります」
隆元が言う。
「ですが」
「それでもじゃな」
「はい、謀ごとの類は苦手ですので」
「やはり大した相手ではない」
「戦で向かい合うだけではありませんな」
「うむ、そうじゃ」
元就は攻めるだけではなくその前に色々と仕掛けるのだ。これまで暗殺や分裂を仕掛けてそのうえで敵を弱体化させてきているのだ。
だから今回もそうするというのだ。だが。
「宇喜多はのう」
「あの者はですか」
「やはり」
「油断なりませぬか」
「そうじゃ。あの者は毛利に擦り寄りはする」
しかしだというのだ。
「じゃが。心から従わぬ」
「それは決してですな」
「何があろうとも」
「あれは毒蛇じゃ」
元就は宇喜多をこう評する。
「まさにな」
「ですな。数多くの謀で国を得ています」
「我が家とは比較になりませぬ」
「しかも己の為だけに使ってきました」
「毒蛇そのものでございます」
「謀にも決まりがある」
元就自身への言葉でもあった。この言葉は。
「己の為だけに使ってはならんのだ」
「あくまで家の為ですね」
「その為に」
「確かにわしも謀はよく使う」
それで中国地方、西国の覇者になった様なものだ。彼は尼子も大内もそれで倒してきたところが大きいのだ。
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