第百十二話 東西から見た信長その一
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る彼に具体的に問うた。
「どちらじゃ」
「さしあたっては様子見でしょう」
これが彼の返答だった。
「今のところは」
「何故そう言うのじゃ」
「はい、確かに織田家は天下を目指しております」
隆元もこのことは承知だった。
「それを阻む者は誰であろうともどけようとするでしょう」
「兄者、だからこそでございます」
元春は強い声で兄にも言う。
「織田家と当家は」
「あくまで天下を阻む者の場合はじゃ」
隆元はその次弟にも貌を向けて述べる。
「それを阻まぬ相手には何もせぬ」
「その通りでございます」
隆景は長兄の言葉に頷く。
「それはあくまで天下を争う相手に対してだけでございます」
「その通り。しかし織田家が若し当家を天下統一の邪魔とみなせば攻めてくる」
間違いなくそうしてくるというのだ。
「その場合は戦う」
「では兄者はわしの考えに賛成でござるか」
「そうではあるしそうではないやもな」
隆元の今の言葉は曖昧なものだった。
「実際のところはの?」
「?ではそれがしの考えにも賛成ではないのでございますか」
隆景もいぶかしみ長兄に問う。
「それでは」
「だから賛成ではあるしそうでもないとも言える」
「では一体」
「だから今は様子を見るだけでよかろう」
隆元はあらためてこう言った。つまり今は織田家の出方を見るべきだというのだ。これが隆元の考えだった。
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