TURN55 ドロシー失踪その七
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「カナダさんが来てからだな」
「ではその様に」
山下は冷静な声で日本に答えた。
「この研究所の件は」
「後はこの施設は」
「何か再利用できるかも知れませんね」
日本は施設の中を見回しながら述べた。
「林業なり何なりに」
「ではその様に」
「はい、それでは」
研究所は何らかの形で再利用されることが決まった。そして。
研究所を破棄したドロシーはガメリカに帰ってはいなかった。彼女は暫く身を隠すことにしてカナダ原住民の居留地に入っていた。
コロニーの一つであるそこに入ってまずはこう呟いた。
「何もない」
荒野だった。空気も乾いており風には砂が混ざっている。
空も青いが薄い感じだ、その空も見て言うのだった。
「こうした場所でも今は」
「御前誰だ」
そのドロシーに声をかける者がいた。それは、
暗褐色の肌の大柄な男だった。髪は長く黒い。目は髪と同じ色でしっかりとしたものに見える。
身体つきはしっかりとした筋肉質で上半身は裸だ。下はズボンであちこちにアクセサリーを付けている、その外見は。
「ネイティブね」
「インディアンとか言われていた」
「そうね。けれど今は」
「ナイティブと呼ぶか」
「我が国とカナダの原住民」
ドロシーは彼等をこう認識していた。
「会うとは思っていたけれど」
「今はここが俺達の場所」
男は短い口調でドロシーに言う。
「星にはいない」
「そうなっているわね」
「それでどうしてここに来た」
「身を隠したくて」
だからだというのだ。
「テントは持って来たわ。他の簡単な設備も」
「御前困っているか」
男はドロシーにその短い口調で問うた。
「どうだ」
「別に」
「インディアン来た者を拒まない」
「気遣いは無用よ」
「気遣いじゃない。これインディアンの慣わし」
だからだというのだ。
「遠慮することはない。来ればいい」
「貴方の家に」
「そう、来る」
そうすればいいというのだ。
「簡単な食事がある」
「私はここでの生活を何も知らないけれど」
「これから」知ればいい」
男はまたドロシーに答えた。
「全てはな」
「そう言ってくれるの」
「来い」
男はドロシーを自分の家に誘った。
「姉さんがいるが静かだ」
「二人暮らしだったの」
「一人増えてもどうということはない」
「それがネイティブの考え」
「慣わし。じゃあ来い」
「ええ。それじゃあ」
ドロシーは男の言葉に頷いた。そのうえで彼に問うた。
「貴方名前は」
「ブラックホース」
男は自分の名をドロシーに告げる。
「ここで猟師をしている」
「そうなのね」
「食うことには困っていない。だから安心しろ」
「何もない。多分パソコンもつながりにくいしテレビも古い
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