第二十話 触手
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マンがフェザーン、ルーデルが辺境星域発行の新聞を調べている。俺が名前を上げた日刊オーディン、夕刊ヴァルハラだがはっきり言ってこの二つはゴシップ紙に近い。載せている記事の信憑性など皆無に等しいんだが俺だけではなく後の二人もこの手のゴシップ紙の類を調べている。
理由は一つ、情報の信憑性は落ちるが鮮度は高いからだ。一流紙は必ず裏付けを取る、情報の確度は上がるんだがその分だけ記事に出るのは遅くなる。また一流紙にとっては意味の無い事でも俺達にとっては重大な意味を持つことも有る。ゴシップ紙を無視は出来ねえ。
例えばだが人の生死が良い例だ。商人にとって貴族の生死は重大な意味を持っている。しかしだ、一流紙が××伯爵が死にそうだなんて記事を出すだろうか? そんな事はしない、死んでから記事を出す。だが俺達にはそれでは遅い、死んでからではなく死ぬ前に××伯爵の領地の特産物を押さえる必要が有る。
つまり俺達には××伯爵が死にそうだという情報が要るのだ。だから俺達だけじゃない、フェザーン商人だってこの手のゴシップ紙を無視はしない。今頃俺達と同じように日刊オーディン、夕刊ヴァルハラを見ている奴が居るだろう、何人もだ……。
ウチが貴族の相続争い、反乱においてフェザーン商人を出し抜いて大儲けできたのはゴシップ紙に記事が出る前に特産物を押さえたからだ。親っさんの指示で押さえたんだが、独り占めだった。一度や二度じゃない、親っさんが頭領になってからずっとだ。五年ほど前からはゴシップ紙もウチの動向を注視するようになった。“黒姫は死の使い”なんて言われるようになったのはその頃からだ。
それにしても面白くないな。爺さんの言う通り今日のニュースは碌なのが無いぜ。四つ巴の情報戦が起きている、お嬢様の影響力が強まっている、キュンメル男爵が死にかけている、オスカー・フォン・ロイエンタール提督が女を変えた、そんなところか……。
もっとも寝たきり男爵は年がら年中死にかけているし節操無しが女を変えるのも珍しくもねえ……。でもなあ、節操無しは帝国軍の重鎮の一人だからな。どんな女と付き合ってるかは大事だよな。それにしても落ち着きのねえ野郎だよ、全く。気が多いんだか、好みが難しいのか……。
ドアの開く音がした。廊下で親っさんが誰かと話している。多分客だろう、話が終わって見送るところだな。さて、どうするか……。
「ルーデル、ウルマン、そろそろ親っさんの所に行くか」
俺の言葉に二人が顔を見合わせ頷いた。
それから十分程してから親っさんの所に向かった。緊張するぜ、こいつは俺達にとっては或る意味試験みたいなもんだ。どんなニュースに関心を示したかってな。親っさんだって同じニュースを見てるんだから。
親っさんは自分の部屋で一息入れていたところだった。部屋にはココアの匂いがして
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