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或る皇国将校の回想録
第二部まつりごとの季節
第三十話 国家安全保障談合
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のようなことをし始めた海良大佐の独り相撲を生暖かい目で観戦する。
 西原信置に翻弄される若手二人組を尻目に興味深そうに佐官たちの国防談義を眺めていた執政が堂賀へと話題を振る。

「貴様は――前線とは縁がないか。現状、〈帝国〉の“耳”はどの程度入り込んでいるか分かるかね?」
 堂賀は憲兵将校からの生え抜きで前線にはまったく縁がない。

「今のところはさほど目立った動きはありませんね。ただ〈皇国〉人を仲介した網もあるかもしませんので警保局警備部と連携してそちらを洗っている最中です。場合によっては魔導院と提携せざるを得ませんのでその際には閣下にお口添えを頂くことになるかもしれません」
 そう執政へとぼそぼそと囁くさまは講談に出てくる悪役そのものだな、と知られたら色々と酷い目に遭うであろう事を考えながら馬堂豊久中佐は周囲に飛び交う幾万もの人命、資源、そして国家の命運に影響を及ぼす言説に耳を澄ませた。


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