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或る皇国将校の回想録
第二部まつりごとの季節
第三十話 国家安全保障談合
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期的な視野を持っている分、まだ交渉の余地がある。

「ふむ――これで予定通り全員そろったな」
 〈皇国〉執政の利賀元正はつるりと禿頭を撫でると面白そうに面子を眺める。
「さて、と西原大佐。随分と玄人好みというか、そこの若造を除けば有体に言って前線に縁がない面子を集めたようだが何のつもりかな?」

「有体に申しまして――皆さんの考えている今後の方針を拝聴いたしたいのですよ。
誰もが独自の方針をもって動いている。駒城も守原も、そしてこの座に居る皆も然り」
そう云うと五将家の一角を代表する西原大佐は一人、下座の奥に坐している若い中佐に意味ありげに視線を送る。
「要らぬ面倒が――それも誰にとっても取り返しがつかないものが起きる事もありますのでね」

「成程、成程。それは確かにあってはならぬことだな」
執政は面白そうにのけぞって笑い、そして牽制の言葉を発する
「だがここに居る連中が神妙に手札を見せ合うとでも?」
その言を受けて海良大佐が唇を釣り上げる。
「私は構いませんよ。皆様ご存じでしょうが、安東家全体の方針を語る事は難しいのであくまで個人的な意見程度ですが」
いち早く逃げを打った若手大佐に歴戦の情報将校も嗤い、そして告げる。
「私も個人的な私見は語っても構わんよ。だが軍機やそれに関する情報は駄目だ」

「君はどうだね。中佐?」

「――同じく、私個人の私見ならば。家督も継いでいない上に〈帝国〉軍来寇の際には龍州送りの身ですが」
落ち着きをとりもどした豊久も言葉少なく頷く。
「執政閣下は?」

「俺は駄目だ。忍びとはいえ言質を取らせるつもりはない」
想定していたのだろう、西原大佐もあっさりとそれに頷いた。誰しもが何も確約できないという事を確認しあい、話は進む。
「それで、今後の方針と云っても西原殿は何をお知りになりたいのですか?」
海良大佐は尖った顎を撫でながら先任大佐に尋ねる。
「そうだな、例えば諸君は如何にこの御国を護るべきであると考えているか、とかな」
――つっこむなぁ。この人も。
内心では冷や汗を流しながら気を落ち着けるために豊久は茶を啜る。
「たとえば北領で実際に戦火を交えた馬堂中佐の意見は皆さん、興味を持っているでしょう?」
話しかける相手が格上二人と格下一人になった時点でさりげなく言葉遣いを変えているあたりは如才ないものである。
「あぁ確かに興味はあるな」
執政が笑みを浮かべて頷いた。
「私も前線とは縁がないですからな」
海良大佐も真面目に頷いた。
「いきなり引きずり出されるのを見てるだけで愉しめそうだ」

「最後おかしいのが居た気がしますが解りました。改めて念を押させていただきますが
※あくまでも個人の感想であり、馬堂の意図を保証するものではありません――という事でお願
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