第一幕その七
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第一幕その七
「そんなに慌てられて」
「おおマクベス殿、奥方も」
バンクォーは彼に顔を向けて言う。
「恐ろしいことだ、陛下が」
「陛下が!?」
「殺されたのだ、今は血に塗れて」
「下手人は!?」
「衛兵達がいた。彼等が血に濡れた手で短剣を持って」
「行こう」
マクベスはそれを聞いてすぐに動いた。そこにマルコムとドヌルベインも来た。どちらも若く美しい青年である。
「どうしたのだ?」
「この騒ぎは」
「おお両殿下」
マクダフが彼等に一礼して応える。
「実は大変なことが」
「大変なことだと?」
「何が起こったのだ」
「はい、実は父君が」
バンクォーが二人に述べた。
「今しがた」
「まさかそれは」
「聞くのが恐ろしいが」
「その通りです」
バンクォーは沈痛な顔で述べた。
「これ以上は申せません。どうかお許しを」
「いや、いい」
マルコムが応えた。苦い顔で。
「よくわかった」
「父上・・・・・・何という」
「衛兵が犯人のようですが」
「衛兵達がか」
「はい」
今度はマクダフが述べて答えた。
「左様です。今マクベス殿が」
「賊はこの手で成敗しました」
丁度そこにマクベスが戻って来た。その右手は左腰の柄に添えている。
「今しがた」
「何っ、もうか」
「左様」
そうバンクォーに答える。
「問い質しても何も言わずうろたえてばかりであった。おそらく気が触れていたのであろう」
「そうなのか」
「何はともあれ実際に手を下した者はいなくなった」
マクダフは考え込みながら述べた。
「しかし」
彼はどうにも不吉なものを感じていた。そのうえで王子達に対して言うのだった。
「宜しいですかな」
「うむ」
「どうした?」
「暫くスコットランドを離れておいて下さい」
こう進言した。
「この国をか」
「はい、マルコム様はイングランドへ」
マルコムにはそう進言する。
「ドヌルベイン様はアイルランドに。どうか御行き下さい」
「何かあるのだな」
「おそらくは」
剣呑な目で二人に告げた。
「ですから」
「わかった」
「それではな」
二人は頷く。その横ではマクベスが妻と共にいた。
「そうして次は」
「王子二人か」
そんな話をしていた。二人の影は黒い筈であったが何故か不気味な赤いものも混じっているように見えた。そのうえで消えようとしている夜の中で赤い月の光に照らし出されていたのであった。
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