第一幕その五
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第一幕その五
「そして王の座へ」
「王か」
「それは血塗られたものであるのですから」
その顔に凄みのある笑みが浮かんでいた。囁く声はさながら悪魔の如きであった。
「だからこそ」
「わかった。ではな」
そのままマクベスは消えた。夫人は相も変わらず凄みのある笑みを浮かべていた。キャンドルに影が映し出されている。その影が揺れる中で立ち続けていた。
暫くしてマクベスが帰って来た。その手にはあの短剣を握っている。だがそれは先程のものとは変わっていた。血塗られていたのである。
「やりましたのね」
「ああ」
マクベスは暗い顔で頷いた。その顔は蒼白となっていた。
「これで終わりなのか」
「いえ、終わりではありません」
「どういうことだ、それは」
「お考えになって下さい」
また夫に囁いた。その悪魔の声で。
「王を殺しただけでは駄目なのです」
「まだ。何かあるのか」
マクベスは暗い顔で夫人に問うた。最早その目は今までのマクベスの目ではなくなっていた。何処か虚ろでありそれでいて不気味な光を漂わせていた。
「梟の声が聞こえていますね」
「うむ」
確かに聞こえる。マクベスもそれは聞いている。
「まだ夜ということです。ですから」
「どうするのだ」
「その短剣を始末するのです」
「短剣をか。待て」
ここでマクベスの顔が何かに怯えたものになった。
「何か聞こえないか。言葉が」
「言葉ですか」
「そうだ。隣の部屋には誰かがいたな」
「王子二人が」
夫人は言う。ダンカン王の息子二人だ。マルコムとドルヌベインという名である。マルコムは金髪、ドヌルベインは赤髪でそれぞれ父と母の血を受け継いでいた。
「いますが」
「見てはいないか」
「夜ですよ」
夫人はそうマクベスに述べた。
「寝ている筈です」
「そうだな。では気にすることは。いや」
また聞いた。少なくとも彼はそう感じた。
「やはり聞こえる」
「では何と言っていますか、その声は」
「わしのことだ。わしのことを言っているのだ」
部屋の中を見回す。それと共にそこに何かを見て怯えていた。
「以後御前の枕は茨となったと。グラーミス、御前は永遠に眠りを殺した。コーダー、御前は夜ごと起きてはならないと。わしのことだ」
「それでしたら私にも聞こえますわ」
夫人は怯えるマクベスに対して邪悪な笑みを浮かべて言うのだった。まるで怯えきった夫をその笑みと声で悪の道に引き込むように。
「マクベス」
「わしか」
「御前は誇り高いが勇気がない」
「何っ」
「グラーミス」
夫と同じ言葉だった。
「御前は怯えている、なら止めてしまえ」
「もうやってしまった」
マクベスはそれに反論する。
「それでどうして」
「コーダー」
夫人は
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