第一幕その四
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第一幕その四
「手紙は読んだな」
「はい」
夫人は夫の言葉に応える。
「おめでとうございます、コーダーの領主様」
「そうだ。わしはまた新たな土地を得た」
「おめでとうございます。そして」
夫人はそこから夫に問うのだった。
「陛下が来られるのですね。今日ここに」
「うむ。おもてなしの用意はできているな」
「はい。それで」
また夫に問う。
「何時お発ちになられるのでしょうか」
「明日だ」
マクベスは王がこの城を発つ時間も妻に教えた。
「明日の朝。太陽が昇ると共に出られる」
「明日ではないですね」
だが夫人はここで夫に対してこう告げた。
「明日太陽が顔を出すことはありません」
思わせぶりにこう述べた。
「違いますか」
「まさかそなたは」
「手紙は読みました」
夫に対してまた告げる。
「それならば」
「わかった。しかしだ」
「全ては私の中に」
夫に顔を向けずに言う。独白に近かった。
「ここはお任せ下さい」
「・・・・・・・・・」
マクベスはその言葉に何も言えなかった。妻の凄みのある笑みを見てしまったからだ。だが彼は気付いていなかった。それは今の自分の顔でもあるということに。
その夜の宴は何事もなかった。無事に終わり夜となった。マクベスはその夜にまた夫人の部屋において彼女と話をするのであった。やはりキャンドルの朧な光が二人を照らし影達がユラユラと揺れ動いていた。悪霊の様に。
「陛下はお休みになられましたね」
「うむ」
マクベスは夫人の言葉に頷く。何故か夫人に背を向けて立っている。夫人も立ってその背中を見ながら話をしている。
「ゆっくりとな」
「ではこれを」
背中越しに自分を見ている夫に対して何かを出してきた。
「これをお使い下さい」
「短剣か」
「そうです。これで王位を」
凄惨な笑みだった。既に血に濡れた顔になっていた。目の光が赤く浮かび上がっている。その笑みでじっと夫を見据えていたのだ。
「しかしだ」
マクベスはそのぞっとする顔から目を離して言う。
「わしは。王位は」
「いえ」
夫人は夫の言葉を否定する。
「貴方はそれを望んでおられます。ですから」
「その短剣を使えというのだな」
「今更何を恐れているのです?」
怯える夫の目を見据えて言った。
「世界の半分が眠り後は異形の者達だけが起きているこの時に」
「ではわしはその異形の者なのか」
「それは私も同じこと」
夫に対して言う。
「同じなのですから。さあ」
「曲がった剣だな」
マクベスはまたその短剣を見た。
「禍々しいまでに」
「サラセンの剣です」
夫人は言う。
「邪悪なるサラセン人達が鍛え上げた」
イスラム教徒達のことである。キリスト教世界において
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