第三幕その四
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第三幕その四
「あれを持っているのは王の父になる者だけ」
「王としてあそこに並ぶ筈なのに」
「どういうことだ、それは」
「それはわからない」
「我等にも」
マクベスにも答えられなかった。
「我等がわかるのはここまでは」
「後はわからない」
「待てっ」
消えようとする魔女達を呼び止めようとする。
「まだ話は。待つのだ」
「残念だがこれまでだ」
「さらばだ王よ」
マクベスの呼び止める声は適わず魔女達はその姿を闇の中に消していっていた。
「これでな」
「予言に導かれ」
「くっ、不安は晴れぬか」
魔女達が消え一人になったところで呟く。消えるどころか増すばかりであった。バンクォーの鏡が目に残る。慄然としていたがそれも収まり居城に帰った。そこで王の間に入り夫人と話をするのであった。
「魔女達のところに行っていたのですね」
「うむ」
夫人の問いに頷く。その顔は蒼白だったが暗い部屋ではわからなかった。
「その通りだ」
「それで何と」
「まずはマクダフに気をつけよとのことだ」
騎士の言葉を今告げた。
「マクダフにですか」
「そう。そして」
さらに言う。
「女から生まれた者には敗れはしない」
「女から生まれた者にはですか」
「つまりこの世にいる者にはだ」
マクベスはそう考えることにした。血塗れの子供の言葉を。
「敗れはしないと」
「左様ですか。では安心ですね」
「もう一つあった」
マクベスはまた言った。今度は王冠の子供の言葉を。
「バーナムの森が動かない限りは大丈夫だと」
「では間違いなくですね」
「しかしだ」
どうしても心から離れないことを。今夫人に告げた。告げずにはいられなかった。
「バンクォーの子孫はまだ王に就ける」
「フリーランス殿が」
「そうだ。あの者は今何処にいる」
「アイルランドのようです」
夫人は密偵から聞いた話を夫に述べた。
「そこに逃げたか」
「どうされますか?」
夫人はあえて夫に問うた。その口元の邪な笑みから答えがわかっていて問うているのがわかる。
「刺客を送れ。アイルランドにな」
「わかりました。それでは」
そう言うことはわかっていた。そのうえでもう一つ答えがわかっている問いを出すのだった。
「ではマクダフ殿は」
「あの者にもだ」
マクベスは暗い顔で述べた。
「城ごと焼き払うのだ。いいな」
「はい」
「全ては血の流れるままに」
マクベスはその暗い顔で呟いた。
「そうして玉座を占め」
「永遠の繁栄を」
夫人もまた邪悪な笑みで応える。二人の影はまたしてもユラユラと揺れていた。だが灯りのせいなのかその影は時折消えていた。しかし二人はそれに気付いてはいなかった。
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