第八章
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「お、おい駄目だよ、そんな勝手に!」
慌てて引き止める。柚木は一応足は止めるが、高速で回るルービックキューブを食い入るように見つめている。
「見て、これ5×5タイプのやつだよ!」
どうやら、キューブの升目が縦横に5つあることに感動しているらしい。
「…そういうものなんじゃないの」
「あーん、分かってないな、姶良は!…いい、普通に出回ってるルービックキューブは3×3。これが4×4になるだけで、100万倍の難易度になるっていわれてるんだよ」
「……そんなことよく知ってるな、柚木ちゃん。君、その世代じゃないだろう」
「ちょっと流行ったよ。高校のとき、クラスの中で」
「4×4と5×5の難易度は、たいして変らない」
少女は、呟くと同時に手を止めた。静止したルービックキューブを見て、僕は息を呑んだ。そのキューブの6面全面に、卍が出来上がっていたのだ。
その3秒後、キューブは再び高速で回り始めた。な、何だこの娘、レインマンか!?ここに入ってから先、キューブの動きにばかり気をとられて本体を見るのを忘れていたことに気付き、ふいと目を上げる。
目が、合ってしまった。
「…僕のせいだ」
「お、お前、今なんて…」
「僕のせいだ、僕のせいでこんな…僕のせいだ、僕の…」
僕のせいだ、僕のせいだ…言葉が止まらない。『彼女』から目を逸らせない。その空ろな瞳に思考を吸い取られるように、頭の中が真っ白なもやで満ちていく。横にいる二人が何か言いながら僕を揺さぶる。でも知らない、叫ぶのを止められない。彼女がここにいるのは僕のせいなんだから、僕の…!!
「……あなたの、せいよ」
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彼女の歪な残響が頭の中で何度も反響して、白いもやは黒いもやに飲み込まれた。
――ご主人様からの応答がふいに途絶えて、また一人ぼっち。またスリープモードに入っちゃうしかないのかな。
「…開けちゃおうかな…」
青白く光るドアが、さっきより大きくなってる。なんだか怖くなって、暗くなったディスプレイに身を寄せる。
――ご主人さま、なんでここにいてくれないのかな。
ご主人さまが、柚木の話とか、私が知らないお友達の話をする時の嬉しそうな顔が好き。
あのドアを開けて、分かったことがあるの。
人間て、1人では存在できない。柚木とか、紺野さんみたいな『仲間』がいないと、少しずつ回路が狂って、いつか壊れてしまう。だから『仲間』が必要。ご主人さまが笑ってくれるのは、みんなのおかげ。
――でもあの子のご主人さまは、いつも1人で、あの子だけに微笑んでくれた。
寂しくて、壊れてしまいそうな人だけど、あの人はあの子だけのもの。もしも私のご主人さまが、あの人と同じような立場になったら、
『大好きだよ、ビアンキ。僕
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