綻びを残して
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それだけではないだろう。同盟軍は、別に皇帝の愛臣だからといって手を抜いていたわけではないのだから。
グリーンヒルは、詳細極まりないラインハルトの功績報告書を、帝国軍人データを読んで、この男の天賦の軍才を認めざるを得なかった。なかば、そうではないかと思っていたのを、この報告書によって確信に変えたのである。
そして、その天才に、戦場で四度見えたフロル・リシャール。
??1度目はヴァンフリート4=2防衛戦。
??2度目は第6次イゼルローン要塞攻略戦における前哨戦。
??3度目は第6次イゼルローン要塞攻略戦の最終盤における伏兵奇襲戦。
??そして、4度目は第3次ティアマト会戦の、逸脱行動。
そして、どの作戦も、フロル・リシャールという男は、半ば自らの志願という形で、戦闘に参加していた。
ヴァンフリートの転属は、当時の基地司令、シンクレア・セレブレッゼ中将の招聘に快諾《・》して実現したものである。当時、これを知ったグリーンヒルはフロルの信義に感心したものだった。なぜならば、その当時、フロル・リシャール中佐《・》は第5艦隊の作戦参謀、しかも先のアルレスハイム星域会戦の戦功が認められ、次期、次席作戦参謀の就任が確実視されていたのである。
それを、フロルはかつての上司からの願《・》望《・》というだけで、蹴ったのだ。
ヴァンフリート4=2はいかに戦場に近いとは言え、後方基地として建設されたものである。本来ならば、帝国が同じ星の裏側に艦隊を駐留するなどというバカな偶然が重ならなければ、一切の戦闘も戦功も発生するような場所ではなかったのである。
だが、戦闘は起き、フロルはラインハルトと交戦し、瀕死の重傷を負いながらも、戦功を手に入れた。
第6次イゼルローン要塞攻略戦は忘れもしない。<小賢しい敵>であったラインハルトの艦隊を罠にかけようと一番暗躍したのはフロル・リシャールであり、最終的にラインハルトの艦隊を待ち伏せ、同盟の一矢を報いたのもフロル・リシャールである。
そして、第3次ティアマト会戦では、指揮権を得ると突如命令から逸脱してまで、ラインハルトと交戦を試みた。
すべてが、ラインハルトとフロルの偶然の星の巡り合わせであったならば、それで良かっただろう。
しかし、手元の資料は、その状況は、グリーンヒルに新たな見方を示していた。
「フロルは、ラインハルトと交戦する状況を、わざと作り出している……?」
グリーンヒルは、自らが口にしたことが信じられなかった。呆然と、コンピュータのディスプレイを見る。
反転された、<Frol Richard>の名前が、点滅していた。
***
「??次に、フロル・リシャール新少将を紹介しよう。リシャール少
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