綻びを残して
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はこの結果に首を傾げた。
フロルが敵視しているという帝国の中将は、ミューゼルという帝国騎士の家出身だという。この異例の出世には実の姉が皇帝の寵姫となったことが大きいだろう。だが、その男がローエングラム伯爵家と関係のあるということは、情報部の活動によって日々更新されている帝国軍人データには、書いてはいなかった。
??なぜフロルは、このラインハルトという男をローエングラム姓で呼んだのか。
グリーンヒルは詳細に、豊富に記述されているラインハルト・フォン・ミューゼルというこの若き中将のデータを読んでいた。 そして、その記述量が通常のそれではないということに、遅れて気づいた。いかに急激に権力を増した若き名将とはいえ、一介の中将である。スクロールしても、スクロールしても終わらない人物データは、同盟軍のデータベースにしては多すぎる情報量であった。
しかもグリーンヒルはこの時、ラインハルト・フォン・ミューゼルという男が、第6次イゼルローン要塞攻略戦で、同盟軍を掻き回したあの”小賢しい敵”の指揮官であることを知ったのである。
<??ラインハルト・フォン・ミューゼル少将は2000隻の分艦隊でもって、イゼルローン回廊出口付近に20余度の出撃を行い、同盟軍の分艦隊規模の戦力をことごとく排除した。この時、かの者が見せた艦隊運用は巧緻な艦隊運動や高度に計算された戦術から見ても、重大な脅威であった。表3を参照されたい。ミューゼル分艦隊によって撃破された同盟軍の戦力、指揮官、被害、戦術についての一覧である。驚くべきことにかの艦隊は、20余度に渡る出撃と交戦において、すべて違う戦術理論を用いてこれに当たった。その結果、対処した同盟軍は毎回変わるその戦術に対処できず、連敗を??>
グリーンヒルは慌ててページ最後に記された最終編集者の名前を探した。
??フロル・リシャール
彼は椅子の背もたれに体を預けた。
検索ツールを探し出して、<ラインハルト・フォン・ミューゼル>のページでフロル・リシャールを検索する。
検索結果は13件。
異常だった。
同盟軍に対する脅威として、ラインハルト・フォン・ミューゼルが台頭してきたのは、ここ数年のことである。
にも関わらず、一介の同盟軍人と帝国軍人がこれほどの回数、戦場で見えるということは、普通ではなかった。
確かに、ここ数年の同盟軍と帝国軍との闘争は大規模かつ頻繁である。大規模な戦いだけでも、794年のヴァンフリート星域会戦、同年の第6次イゼルローン要塞攻略戦、795年の第3次ティアマト会戦と続いている。
ラインハルト・フォン・ミューゼルはその悉くの戦いに参加し、そして功を上げている。この2年弱の期間で准将から中将にまで昇進するというのは、いかに皇帝の寵愛があったとしても、
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