第3次ティアマト会戦(6)
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った。
ラインハルトの艦隊は十分な働きをし、帝国は優勢に戦いを進めていると言えたが、その公算も崩れたのである。
「我が艦隊の補給が完了するまで残り3時間48分です。ですが??」
「本隊が攻撃されるのを黙って見ているわけにもいかないだろう。まったく小癪な叛乱軍め」
「陣容はいかがなさいますか?」
「装甲の厚い艦から補給を優先させろ。それらの艦を前面にして戦列を整え、側面から妨害をかける。この宙域からではミュッケンベルガーの艦隊にはあの敵部隊の方が先に接触する。万一、奇襲をかけられてミュッケンベルガーが戦死でもしたら、俺の武勲に差し障る。ミュッケンベルガー艦隊の側面に一撃を加えんとする敵艦隊の側面に我が艦隊は割り込む。下らんが、盾となる他あるまい。ミュッケンベルガー艦隊はまだあの部隊に気づいていないのだろうからな」
3次元レーダー投影ホログラフを見ながら、ラインハルトは唇を噛んだ。
***
??なんとか間に合ったか。
ビュコックはそう思っていただろうが、それを口に出すことはなかった。大軍を率いる将とはそういうものである。安易に感情を出してはならない。むろん、味方を奮い立たせる時は檄を飛ばすが、だからといっていつも興奮状態にあるわけにもいかず、かといって不安や動揺を見せてもならないのだ。ビュコックは老将だが、頼りになる宿将だ、と味方の将兵に思われるためには、頼られるような立ち振る舞いが要求されるのである。
彼はホログラフで表された戦況図に映った同盟軍の半個艦隊を見ていた。その半個艦隊は何よりもスピードを優先するように、亜光速で天頂方向から近づいていた。急襲をかけようとしているのは明確であったし、その目標が帝国軍中央艦隊のミュッケンベルガー艦隊であることも、わかっていた。
ビュコックにとっても、第4艦隊を突破してきたミューゼル艦隊の猛攻は辛いものであった。あれほどのプレッシャーを、たった一個艦隊から感じたのは、彼の長い軍役においても初めてのことであった。
「あるいは、儂が若い頃に見たブルース・アッシュビー提督が帝国軍にいたとしたら、あのようなプレッシャーを感じたかも知れんな」
という言葉は、のちにユリアン・ミンツが遺した著書に記せられたビュコックの言葉であった。もっとも、アッシュビー自身は猪突猛進型の将ではなかったわけであるから、あくまで艦隊の勢いという意味だったろう。一個艦隊を思いのままに撃砕したミューゼル艦隊の勢いは、守勢に回らざるを得なかったビュコックをして苦しませるものだったのだ。
ビュコックの後ろに立っていた副官のファイフェル少佐が歩み寄る。
「前方の帝国軍中央艦隊の攻撃が乱れています。我が艦隊も、残りの弾薬をすべて使い切る勢いで反撃するべきかと」
「当初の予定
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