第3次ティアマト会戦(6)
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番劇》の終幕に間に合わせるとは、な」
ラインハルトは遮音フィールドの作動した指揮官席に座りながら、正面のホログラフディスプレイを見つめてそう言った。
「計算が狂いますね」
横に立つキルヒアイスは悔しげな頬の歪みを見せるラインハルトを見つめながら、わざと直裁な言い方をした。言われたラインハルトはその次の瞬間こそ、キルヒアイスを氷の矢のような視線で睨み付けたが、一瞬でそれを和らげた。キルヒアイスにはいつも通りの穏やかな笑みが浮かんでおり、ラインハルトもキルヒアイスに怒りをぶつけても意味がないことに気づいたからである。
「第4艦隊の指揮官は、ラウロ・パストーレと言ったな。それがこちらの予測よりも優秀であったと言うことか」
「旗艦の撃沈は確認しました。それ自体は指揮官の死を意味するものではありませんが、他の指揮官に指揮権が引き継がれた可能性はあります」
キルヒアイスはあくまで可能性の話をしていたが、現実はそれが事実であった。
第5艦隊の主席幕僚である男が、本隊との連絡が途絶した第4艦隊との意思疎通と、連携した撤退戦を図るために第4艦隊に派遣されていたからである。
宇宙それ自体は広大であり、それを把握するための電磁技術も高度に発達していたが、戦場における両方が行う妨害工作が、小戦力の戦中移動を可能とした。つまり、少数の艦艇で動き、戦場の混乱の中、フロルは第4艦隊に辿り着いたのである。
「あの艦隊の目的が何処にあるのか、キルヒアイスはどう思う」
「敵は攻撃力の高い戦艦を前面に押し出しています。攻撃力に特化した陣形です。戦術的なレベルでは敵第5艦隊を攻撃せんとする我が軍中央部隊を、天頂方向から急襲する形になります。ですが、その戦略目的は??」
「撤退だな」
ラインハルトは簡潔に言い切った。
「帝国軍も叛乱軍も、既に完勝はありえません。このまま状況が進行しても、徒らに損耗を増やすだけです」
「ふんっ、下らん。そもそも作戦目標も定まらないような作戦を遂行する軍上層部が無能なのだ」
ラインハルトにとって、今回の中途半端な軍事行動の原因は、すべてそこに集中するのであった。補給線も困難というほどではないにいしろ、遠く敵国領内に侵攻している。軍事行動というのはそもそも目的を達成するための手段なのであって、手段を目的とした暴挙はラインハルトの嫌うところだったのだ。
「一撃を加え、中央艦隊と呼応して、全艦隊撤退を図るか。そして帝国にそれを追撃する余力はない」
せめてラインハルトの艦隊の補給が間に合えば、効率的な追撃がかけられるのだが、その猶予はなかった。ラインハルトの艦隊は同盟第5艦隊に対する補給を度外視した加重攻撃によって一時的に戦闘不能に陥っており、最前線を脱しつつ補給を再開していたが、ものの30分では補給が完了するべくもなか
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