第3次ティアマト会戦(6)
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けにはいかんのだ。この艦隊は俺の艦隊だ……。誰にも指揮権は譲らん。お、俺は??」
「そのために味方を見捨るというのですか!」
パストーレは血走った目でこちらを睨んだ。
「味方だと! あいつらは俺を当て馬にして、帝国の餌にしたんだ! お、おかげで俺の艦隊は??」
「あなたの艦隊は約1万隻、対する帝国軍も約1万隻。第4艦隊は十分な時間をもって迎撃態勢を整え、両軍は正面からぶつかった。どんな奇策を敵が用いたとしても、あなたは互角の敵と戦って負けたんです。あなたの指揮で」
フロルは、あえて残酷に事実を突きつけた。
帝国軍の指揮官があの、ラインハルト・フォン・ミューゼル、常勝の天才だとしても、戦力は互角だったのだ。
「帝国軍の将軍が、パストーレ中将より優秀であったから、同盟軍は負けたんです。その事実から逃げないでくさい。あなたは劣っていたから、負けたんです」
「そ、それが上官に向かって言う台詞か!」
パストーレは起き上がろうとして、失敗した。彼は体勢を崩し、ベッドから転げ落ちたのだ。医療器具が押し倒され、耳障りな物音を立てる。
そして残ったのは、
沈黙。
室内にはパストーレの粗い息遣いだけが響いている。
パストーレはあるいは落ちた痛みで、声を上げられなかったのかも知れない。
呻き声を、噛み殺していたのかも知れない。
ただ粗い息だけを漏らして、地面を見つめていた。
フロルは何も、できない。
出来たのは、ただその姿を見据えることだけだった。
「……准将なら、リシャール准将なら、あの艦隊に勝てたと言うのか……」
しばらくしてパストーレが魂の抜けたような声を出した。
あの艦隊とは、ミューゼル艦隊を指すのだろう。
「勝てなかったと、思います」
フロルは、正直に言葉を吐き出した。
パストーレはフロルを見ようとはしなかった。
「……現刻をもって、第4艦隊の指揮権をフロル・リシャール准将に委嘱する。総司令部の指揮に従い、これを指揮せよ」
「はっ!」
フロルは何もない壁に向かって、敬礼をした。
そして踵を返す。
もうその部屋に用はなかった。
***
艦隊上方より同盟艦隊約5000隻来るの報が入ったのは、ラインハルトの艦隊が強行突破を終え、ミュッケンベルガー艦隊と攻撃の主役を交代した直後のことであった。時刻にして、2124時のことである。ラインハルトはすぐにその半個艦隊が、自らが蹴散らしてきた同盟艦隊の残存兵力であることに気づいたが、同時に多少の驚きをもってそれを聞いた。
艦隊の損害規模こそ十分ではなくとも、立て直しには多くの時間を要すると考えていたのである。
「同盟にもなかなか優れた将がいるようだ。まさか、この|第3次ティアマト会戦《茶
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