イゼルローン回廊外遭遇戦
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「閣下」
パストーレはその時考えていた。この少尉はまだ20歳を過ぎたばかりのはずなのに、この司令部で誰よりも冷静な目をしている、と。パストーレは欠点の多い男であったが、ただ一つ長所があった。それは彼自身が有能とは言いがたい人間である、という劣等感にも似た意識であった。だからこそ彼は、その少尉の発言に自分のそれを補う何かを求めたのだろう。
「敵の目的はイゼルローンへの帰還です。敵は一直線で我々を突破し、要塞に帰還するつもりなのです。敵の艦隊は3000隻、例え同盟の今回の秘密訓練を知り得たとしても、第4艦隊15000隻に3000隻で当たるということはありますまい。しかも敵は分艦隊だけでこんなにも領土内に侵入している。他に潜んでいる本隊がいるなら、こんな単独行動は行いません。文字通り、意味がないからです。我々は今、一対一で艦隊戦を行おとしているのです。ここで勝てば、閣下の名声は同盟内に響き渡りましょう」
フロルは戦争が嫌いな男である。本来は人を殺し、血を見て、地獄を覗くようなことは嫌いなのだ。だが彼は今、自分が生き残る為に、なんでもすることを知っていた。彼は自分が生き残るためなら、いくらでもおべんちゃらが使える男なのだ。
「か、勝てるのか? リシャール少尉」
「はい、閣下。私に策があります」
「閣下! こんな少尉ごときに耳を傾けなさるな!」
「だ、だが参謀長……」
「パストーレ閣下、あなたが決めるのです」
「わ、わかった。とりあえず聞こう」
これはパストーレにとって、ゴーサインも同義だった。
「それでは高速通信を使わせて頂きます。機動部隊長を出してくれ」
「わかりました、フィッシャー中佐を出します」
さらにフロルは知っていたのである。原作で、生きた航路図と呼ばれた、艦隊運動の達人がこの分艦隊にはいることを。
「フィッシャー中佐であります。司令部からとのことでしたが?」
フィッシャーは司令部からの通信で現れた、明らかに若い少尉を見て眉を顰めた。
「リシャール少尉です。小官のことは司令部の通信役と思って頂きたい。中佐殿、現在本艦隊は帝国軍3000隻に右舷より攻撃を受ける直前にあります。敵の目的は我が軍の中央突破、そして要塞への逃走だと思われます」
「なるほど」
フィッシャーは目の前の若者が理路整然と語るのを見て、言葉を信じたようである。フロル自身は一度も、これが公式な命令とは言ってないのにも関わらずである。
「現在、旗艦レオニダスは艦隊の後部にあります。そちらは前にあるということでよろしいですね?」
「ええ、艦隊の中央よりは前に来ています」
「敵艦隊は、本艦隊の進行速度を見極め、我が艦隊の中央を突破しようとするでしょう。そこで、フィッシャー中佐には本艦隊の後方半個艦
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