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【旧】銀英伝 異伝、フロル・リシャール
イゼルローン回廊外遭遇戦
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の亡命希望者であった。宮廷内においてブラウンシュバイク公の甥を不慮の事故で殺してしまうという一件によって、その一派より命を狙われていたのだった。エッフェンベルク子爵はその貴族の持ちうる軍事特権でもって要塞イゼルローンを半ば強制的に訪れ、自らの持ちうる限りの財産をもって、自らの腹心の家臣とともに単艦、イゼルローンより同盟に逃げたのであった。それが8月3日のことである。なぜ亡命するにあたってフェザーンではなくイゼルローンをわざわざ選んだか。これは同時期同様に亡命を図り、フェザーン航路中に事故死した某男爵の事件をエッフェンベルク子爵が知っていたからだと言われている。
 軍事要塞からの帝国貴族の亡命というゴールデンバウム王朝の汚点を、軍部が放置することはなかった。駐留艦隊司令官ヴァルテンベルク大将は子爵を抹殺しようと画策したのである。子爵を殺せば、ブラウンシュバイク家に良い印象を与えるのは確実だったからであろう。
 そこで子爵の捕獲隊、もとい粛正部隊として駐留艦隊の分艦隊3000隻を出撃させたのだった。
 追っ手の存在に気付いた子爵の船は恐慌状態に陥った。捕まれば死罪は免れぬのは明白である。彼らは死に物狂いで逃走を続けたが同盟側のイゼルローン回廊外にて、翌8月4日、同追跡部隊に捕捉され、撃沈された。

 さてここで不幸が重なる。
 その時機、同盟軍では大規模演習として第4艦隊がイゼルローン回廊付近まで来ていたのであった。両軍は予期せぬ遭遇戦を迎えることになる。
 帝国軍は明らかに同盟領に入っていた。先に敵に気付いたのは帝国軍である。捕捉されたのは同盟第4艦隊、パストーレ准将指揮下の分艦隊3000隻。数の上では互角であった。帝国軍は撤退しようにも、回廊に戻るには、分艦隊の目前を通らねば帰れない。
 そして文字通り誰一人として望んでいない戦いが始まったのである。


「報告! 敵艦隊発見ッ! 方角は3時20分!」

 同日7時21分。敵発見の知らせは旗艦レオニダスに衝撃を与えた。本来、今回の大規模軍事演習は帝国に対する示威行為と偵察も兼ねており、わざわざイゼルローン回廊の目の前まで来たのであるが、艦隊の誰一人として、実際に敵と遭遇することは考えていなかったのである。

 ここにも同盟国家の末期症状が見られると言って良いだろう。政治家は軍隊を一つの政治ショーの見せ物として今回の訓練を企画し、実行した。軍部としてはそれはまさにゴリ押しされた作戦というべきで、誰も止めることは出来なかったのである。しかも、今回の軍事訓練は、なかばパストーレという国防族議員に親しき将校のために企画されたのである。
 実はフロルがこの艦隊に来てから、明らかにその艦隊の任務遂行能力が向上したという事情がある。フロルは初めて配属された艦隊のために、それこそ寝る間を惜しん
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