第3次ティアマト会戦(5)
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超短期決戦によって第5艦隊の指揮系統を壊滅させ、艦隊という巨大な組織が戦闘不能に陥るまで痛めつけることである。
補給線は伸びきらない。
ミュッケンベルガー艦隊が前を押さえているからである。
だがその猛烈な攻撃は瞬く間にラインハルト艦隊のエネルギー、物資、弾薬を消費していった。
補給が不可能なのではなく、その時間的余裕がラインハルト艦隊からは失われていた。ラインハルトはその艦隊の持てる力をすべて攻勢に費やしたのである。それほど、苛烈な攻撃であった。
その猛攻を受けてなお、第5艦隊が壊滅しなかったのは、ただ偏にビュコック中将のおかげであっただろう。ビュコックは予想もつかない、芸術的な艦隊運動で翻弄しようとするラインハルト艦隊を受け流し、受け止め、そして反撃し、突撃を敢行するラインハルト艦隊にしぶとく対処し続けた。
2200時に至り、ラインハルト艦隊は第5艦隊の15%の艦艇を撃破、30%の艦艇を戦闘不能の破壊を加え、第5艦隊を突破した。分断され、消耗した第5艦隊は、そこで抑えに徹していたミュッケンベルガー艦隊のスイッチ攻撃に遭う。
既にラインハルト艦隊は限界に達していた。将兵を総動員したような猛烈な戦いは、人的疲労の限界を招いたのだ。だがその無理な攻撃によって、第5艦隊は満身創痍となり、あとは止めを刺すばかりであった。
役目を交代したミュッケンベルガーが、第5艦隊に最後の猛攻をかけようと、全艦突撃を命令しようと右手を掲げたその時、事態は最終局面へと駒を進める。
***
「おい見ろ、この影、何かわかるか?」
ミュッケンベルガー艦隊の中でも、もっとも端にいた駆逐艦グリンブルスティの、情報通信士官グスタ・ホフベルクが索敵レーダーに映った影に気づいた。そこは最前線からもっとも離れていたため、その声に緊張はない。周りを見ても<この戦いは勝った>というムードが流れている。あの金髪の儒子が敵を翻弄し、分断したという知らせが、それを決定づけたのだった。
ご多分に漏れず、隣で舟を漕いでいた同僚のロルフ・グライナーも、その声で目を覚ましたようである。
「なんだ、なんかいたのか?」
目をこすりながらそのディスプレイに映った索敵レーダーは、天頂方向からの何かの影を映し出していた。
??天頂?
「隕石かな」
最初に見つけたグスタは、声に若干の不安を込めてロルフに尋ねた。グスタとロルフは同じ時期に着任した謂わば同期であったが、情報通信任務に就いている期間はロルフの方が長いのだ。
「隕石……かな。レーダー透過装置のある軍用艦は、こんなにレーダーに映らんものだ。だが……」
「ああ、ちょっと数が多すぎる」
レーダーの探知外にあったその隕石らしき影は、徐々にその数を増してレーダーに映り
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