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【旧】銀英伝 異伝、フロル・リシャール
第3次ティアマト会戦(5)
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間稼ぎと、敵の挟撃作戦を防ぐことです」
「挟撃?」
「……対している敵艦隊が我々を抜ければ、同盟2個艦隊は前後から敵に攻撃されるでしょう?」
「おお、そうだったな」
 フィッシャーは何も言わない。
「混戦に持ち込めば、勝つことは難しいですが、それを収拾させるための時間で、敵を足止めできます」
 パストーレは頷きながら、ポケットから取り出したハンカチで彼の額の汗を拭いた。まだ戦闘が始まって間もないにもかかわらず、冷や汗が止まらないのである。

 フィッシャーは眉間に皺を寄せたまま、艦橋ディスプレイの陣形図を見た。同盟軍の陣形はフィッシャーが指示したとおり、厚めの凹陣形で敵の紡錘陣形を受け止めようとしていた。陣を厚くし、敵の突破を容易にさせない作戦である。更に敵がこちらを圧倒して陣に食い込んでも、左右に広げた同盟部隊が側方から攻撃をしやすいようになっている。無難ではあるが、もっとも成功率が高い陣形である。
 もっとも、パストーレの下ではこれ以外やりようがない、という作戦である。
「だが、帝国軍も突入の速度こそ凄かったが、それほどではないのではないか?」
 パストーレは、フィッシャーと同じことを感じ取っていたようだった。それはフィッシャーも気付いていたのだ。帝国軍はその見事に統率の取れた艦隊運動によって、同盟艦隊に押し寄せてきたのだが、射程に入ってからはまるで同盟軍に気圧されたように速度を遅くしているのである。これはフィッシャーにとってはむしろ意外であった。先ほど第5艦隊の司令部から伝えられた情報によれば、敵艦隊は第6次イゼルローン要塞攻略戦で同盟軍を弄んだ帝国随一の精鋭部隊だというのだ。
「むしろ、先頭の部隊が孤立している?」
 戦闘が始まってわずか15分経ったに過ぎないにもかかわらず、敵艦隊内の速度が明らかにばらつき始めたことにフィッシャーは気付いた。敵紡錘陣形先頭部の50隻ほどの部隊が、後方の部隊を置き去りにしてこちらに突っ込んでくるのである。しかも砲撃もめちゃくちゃで、まるで適当に撃っているような乱雑さである。しかも、部隊というには艦と艦が疎になりすぎており、ばらばらに突撃してくるようなものだった。

「先頭の小部隊、同盟軍直前!」
「……艦列の内側に入れるな。同盟軍の最前列にいる部隊は、これを叩け!」
 最前列の艦から回された拡大望遠映像が、砲撃がその部隊に当たった瞬間を映していた。
??閃光。
 遅れてカメラに衝撃波が伝わるのがわかった。
「あの部隊には爆弾が満載されているのか!?」
 フィッシャーはその時、敵の考えを読み取ったと確信した。敵のあの部隊は恐らく無人。膨大な爆弾を積載し、こちらに突撃させ、前線を混乱させようというのだ。そしてその混乱の隙を縫って突撃……。
「パストーレ中将」
「あの先頭部隊を叩
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